1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07044251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家森 幸男 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80025600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森口 幸雄 南リオグランデカトリック大学, 教授
石永 裕司 島根医科大学, 第四内科, 助手 (70243433)
奈良 安雄 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (80116417)
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Keywords | 高血圧 / 高脂血症 / 糖尿病 / 肥満 / イソフラボン / DHA / 食物繊維 / 体脂肪計 |
Research Abstract |
遺伝的背景が日本人と同じ日系ブラジル人は出身地である沖縄在住の日本人に比べ食生活の欧米化のともない、高血圧、肥満、高ヘモグロビンAlc、虚血性心電図変化などが有意に増加していることを我々は国際比較栄養疫学研究により明らかにしてきた。これらの危険因子の増加にともない、日系ブラジル人は循環器疾患、とりわけ心筋梗塞による死亡率が増加し、平均寿命も日本人に比べ短縮している。日本においても食生活の欧米化が進み、循環器疾患が増加すると予測される今日、日本食の栄養源が循環器疾患の一次予防にはたす意義を明らかにする必要がある。 そのため、魚、海藻、大豆の摂取が明らかに少ない日系ブラジル人を対象に、高血圧はじめ循環器疾患などの予防に効果のあることを脳卒中易発症ラットで実証しているドコサヘキサエン酸(DHA)、わかめの食物繊維、および大豆のイソフラボンを用いて介入研究を実施した。また、健康管理の意識が十分でない日系ブラジル人に家庭用自動血圧計と体脂肪計を活用して、家庭での管理の有用性を検討した。 カンポグランデ在住日系ブラジル人(47〜57歳)400人を検診して、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満など生活習慣病に対するリスクの高い対象者、100人を抽出した。各20名(男10、女10)を(イ)プラセボ群(C)、(ロ)DNA群(D)、(ハ)わかめ群(W)、(ニ)健康教育のみの対照群(N)、に分けさらに、女性のみ20名を(ホ)大豆群(F)、とした。D群は3gDHA,W群はわかめ粉末5g、F群はイソフラボン50mg含有大豆胚軸6gを毎日、10週間連続摂取し、3週と10週後検診した。なお、全群には減塩や高脂肪食を避けるなど同一の栄養指導をし、自動血圧計、体脂肪計のいずれかを貸与し、血圧や体脂肪を毎日測定しセルフチェックに努めさせた。 収縮期血圧(SBP)はD群で3、10週と有意な低下が認められ、また、W郡においては3週目に有意な低下が認められた。拡張期血圧(DBP)の低下は有意ではなかった。女性の場合、血清総コレステロール値は3週目のW群にのみ有意な低下が認められた。自動血圧使用群の方が体脂肪計使用の群に比べ有意なSBPの低下が認められた。 以上の結果より、大豆、わかめ、DHAなど伝統的な日本食に含まれる栄養素が循環器病疾患に対する危険因子の軽減に寄与することが明らかになった。さらに、血圧の自己管理が危険因子軽減に重要であることが確認された。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] 家森幸男: "長寿の疫学-WHO国際共同研究からみた日本の寿命の要因-" CLINICAL CALCIUM. Vol.6 No.6. 45(721)-46(722) (1996)
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[Publications] 家森幸男: "医食同源と世界の長寿村-食事と薬物からの長寿因子、国際的な疫学研究からのメッセージ-" 中西医結合 動脈硬化症・血栓症・一次予防. 579-583 (1996)
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[Publications] 家森幸男: "世界調査からみた食環境の変化と人類の健康" 「食肉と健康に関するフォーラム」委員会報告書平成7年度. 182-200 (1996)
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[Publications] 家森幸男: "日本食栄養素で日系人の血圧降下" メディカル朝日. 11月号. 63-65 (1996)
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[Publications] 家森幸男: "すばらしき世界の伝統食" 日経メディカル 医と文化. 84-89 (1996)
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[Publications] 家森幸男他: "日本食の栄養学による循環器疾患危険因子の改善" 日本循環疫学会誌(第61回総会抄録集). (印刷中). (1997)
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[Publications] Yamori,Y.,Nara,Y.,Ikeda,K.,Mizushima,S.: "Is taurine a preventive nutritional factor of cardiovascular diseases or just a biological marker of nutrition? In“Taurine 2"(Huxtable,RJ.,Azuma,J.,Kuriyama,K.,Nakagawa,M.,Baba,A.,eds)" Plenum Press,New York, 623-629 (1996)
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[Publications] Li,N.,Sawamura,M.,Nara,Y.,Ikeda,K.,Yamori,Y.: "Direct inhibitory effects of taurine on norepinephrine-induced contraction in mesenteric artery of stroke-prone spontaneously hyperensive rats.In“Taurine 2"(Huxtable,RJ.,Azuma,J.,Kuriyama,K.,Nakagawa,M.,Baba,A.,eds)" Plenum Press,New York, 257-262 (1996)
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[Publications] 家森幸男: "長寿のあしあと" 沖縄県環境保健部予防課, 665 (1995)
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[Publications] 家森幸男: "長寿と日本食-日本から世界への発信-" 生活ジャーナル, 262 (1996)