1995 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスの感染を決定するプロテアーゼの発見と阻害剤による防御機構
Project/Area Number |
07044275
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 博 徳島大学, 酵素科学研究センター, 教授 (50144978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BODE Wolfram MaxーPlanckーInst. fiir Biochemie, Professor
FRITZ Hans Munich Univ. Dept. of Clinical chem and, Professor
田代 眞人 国立予防衛生研究所ウイルス第一部, 部長 (90111343)
唐渡 孝枝 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助教授 (60108876)
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Keywords | インフルエンザウイルス / センダイウイルス / トリプターゼクララ / プロテアーゼインヒビター / 気道分泌液 / アンチロイコプロテアーゼインヒビター / 抗ウイルス物質 / 生体防御物質 |
Research Abstract |
本研究は、これまで不明であったインフルエンザウイルスの活性化とウイルスの細胞内侵入に必須な気管支粘膜の分泌するプロテアーゼ(トリプターゼクララ)の作用機構を明らかにし、その阻害剤による新しいインフルエンザウイルスの予防法と治療法を開発することを目的として研究が遂行された。本年度の研究では、ヒトの気道分泌液中にトリプターゼクララの阻害物質を見出し、精製を行い、その一次構造解析を行った。その結果トリプターゼクララの阻害物質は、従来ヒトエラスターゼの阻害物質として報告のあったアンチロイコプロテアーゼインヒビター(ALP)と同一物質であることが判明した。ALPは、アミノ末端側とC末端側の2つの機能領域に別れている蛋白である。ALPの遺伝子をヒトの耳下腺cDNAライブラリーからスクリーニングし、C末端領域とN末端領域に分けて大腸菌にALP蛋白質を発現させ、機能領域の検定を行った。その結果、トリプターゼクララを阻害する領域はC末端領域にあると同定された。またアミノ末端領域が存在すると、C末端領域の阻害活性が安定化されることが判明した。ALPおよびC末端領域のALPは、約1μMでトリプターゼクララをほぼ100%近く阻害した。また培養細胞へのインフルエンザウイルスや、センダイウイルスの感染を、1μMのALPおよびC末端領域のALPはほぼ完全に抑制した。さらにマウスに適応させたインフルエンザAsia株をラットに感染させるモデル実験動物システムにおいても、ALPは著明な抗ウイルス作用を示した。これらのことから、ALPまたはALPのC末端部位はインフルエンザウイルス感染の治療薬とあるいは予防薬として有効であることが強く示唆された。一方我々はヒトの下鼻甲介を材料として、ヒトのトリプターゼクララの精製を行っている。現在までに部分精製品を得ており、今後さらなる精製を行ってゆく。
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