Research Abstract |
最近の神経科学におけるもっとも大きな課題の一つは,スナプス活動の長期増強(LTP)の操作を解明することにある。シナプスに一定の刺激を加えることにより,数日〜数週間にわたって,シナプス活動の増強が持続する。シナプス活動の長期増強の成り立ちが,ヒトの学習,記憶の基本モデルと考えられており,このことの解明によってヒトの高次機能が明らかにされることになる。最近,長期増強の発現,維持に,N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のグルタミン酸による刺激によって起こる後シナプス細胞での蛋白質燐酸化反応,とくに,CaMキナーゼIIが関与していると報告されている。本研究では,海馬での長期増強の成立機構を検索する目的で,生理学,生化学,薬理学,分子生物学の観点から総合的に解析を進めた。 Soderling Muller両博士を日本に招聘し,共同研究について具体的に討論した。1)海馬CAl領域でのLTPにCaMキナーゼII,Ca^2/カルモデュリン依存性非依存性活性療法の上昇を観察したことから,酵素の自己燐酸化反応のLTPによる上昇,2)LTP誘導時における転写因子活性の調節,とくに,C/EBPファミリーのmRNAの変化,燐酸化反応の上昇について討論した。 研究代表者ならびに研究分担者・山本秀幸は,米国ナッシュビル(テネシー州)バンダービルト大学で開催された第9回第2メッセンジャーと燐酸化蛋白質国際会議に出席し,共同研究の成果を発表した。とくに,研究代表者は,Sodering博士の主催するワークショップに招待され,研究成果を発表し,討論し,情報を交換した。研究分担者の福永浩司は,ジュネ-ブ大学のMuller博士の研究室に滞在し,3週間にわたって共同研究を行なった。1)LTP誘導時に,後シナプス細胞のグルタミン酸受容体の燐酸化反応,2)LTP誘導時におけるプロテインホスファターゼ不活性化反応を研究した。
|