1995 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性の発生学的メカニズム:脊索動物の起源と進化に関する分子発生生物学的研究
Project/Area Number |
07102012
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 矩行 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30025481)
|
Keywords | 生物多様性 / 発生学的メカニズム / 脊索動物の起源 / 脊索 / Brachyury遺伝子 / ウニ / ホヤ / ナメクジウオ |
Research Abstract |
脊索は脊索動物を特徴づける最も重要な形質の一つである。本研究の目的は、脊索形成に関わる遺伝子が動物の進化においてどのようにオーガナイズされてきたのかを解析することによって、脊索動物の起源と進化を分子発生生物学的に解明することである。本年度は主として脊索形成に関わるBrachyury(T)遺伝子の発現パターンを、脊索をもたない新口動物である棘皮動物のウニ、脊索をもつ新口動物である脊索動物尾索類のホヤ、脊索動物頭索類のナメクジウオで研究し、次のようなことがわかった。 1.T遺伝子はウニでも保存されている。その発現は一過的で、原腸胚期に二次間充織の創始細胞で発現する。 2.ホヤでは少なくとも二つの異なるT遺伝子が存在し、一つ(As-T)は嚢胚期に形成されつつある脊索でのみ発現し、もう一つ(As-T2)は尾芽胚期に筋肉系の細胞と尾の先端の細胞で発現することがわかった。 3.ホヤ胚の脊索でのみ発現するAs-T遺伝子を強制発現することによって、予定内胚葉細胞および予定神経索細胞を脊索細胞に分化転換することができた。このことは、As-T遺伝子が脊索細胞の分化に直接的に関わっていることを示す。 4.ナメクジウオではT遺伝子は尾芽胚期の筋肉系の細胞と脊索で同時に発現することがわかった。 以上の結果は、T遺伝子はほぼ全ての動物で保存されており、初期発生において内胚葉からくびれ切れて形成されるような中胚葉組織で発現し、その細胞分化に重要な役割を担っていることを示唆する。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Satoh,N.: "Chasing tails in ascidians:developmental insights into the origin and evolution of chordates" Trends Genet.11. 354-359 (1995)
-
[Publications] Yasuo,H.: "The role of T genes in the organization of the notochord during chordate evolution" Seminars in Develop.Biol.6. 417-425 (1995)
-
[Publications] Harada,Y.: "A sea urchin homologue of the chordate Brachyury (T) gene is expressed in the secondary mesenchyme founder cells" Development. 121. 2747-2754 (1995)
-
[Publications] Terazawa,K.: "Spatial expression of the amphioxus homologue of Brachyury (T) gene during early embryogenesis of Branchiostoma belcheri" Develop.Growth.Differ. 37. 395-401 (1995)
-
[Publications] Marikawa,Y.: "Muscle determinants in the ascidian egg are inactivated by UV irradiation and the inactivation is partially rescued by injection of maternal mRNAs" Roux's Arch.Develop.Biol.204. 180-186 (1995)
-
[Publications] Kusakabe,T.: "Coexpression and promoter function in two muscle actin gene complexes of different structural organization in the ascidian Halocynthia roretzi" Develop.Biol.169. 461-472 (1995)