1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07206108
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐見 森吉 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (20203507)
亀山 郁夫 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (00122359)
沼野 充義 東京大学大学院, 人文社会系研究科, 助教授 (40180690)
浦 雅春 東京大学大学院, 総合文化研究科, 教授 (20193956)
井桁 貞義 早稲田大学, 文学部, 教授 (70063807)
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Keywords | ロシア / 現代文芸 / 20世紀 / ポストモダニズム |
Research Abstract |
現代ロシアの文芸事象(作品・文芸運動)27件について共同で研究し、90年代ロシアの社会的・文化的アイデンティティに関する分析を行った。またロシア現代作家データベース(約150件)を構築し、現代文壇状況を研究した。その結果、以下のような認識を得た。 1)創作家の世代交替:戦前世代から1950年代生まれの作家へと文芸界の中心が移動している。 2)文化の位階の解体:純文学からポルノグラフィまで、多様なジャンルが序列なく混交する状況が生じている。 3)文芸様式の多様化:リアリズムとポストモダニズムを両極とした、文芸様式の多様化が観察される。 4)文芸の脱政治化:政治的テーマがインパクトを失い、家族、性、生命、民族、ロシア、記号、コミュニケーションなどに関するテーマが優勢になっている。 5)アイデンティティの模索:とりわけ血縁、父性の回復、ロシアの歴史的連続性などを扱った作品は、社会的アイデンティティを喪失した現代ロシアにおける、個人と社会のルーツ探求志向の反映として注目すべきである。 6)文化的境界意識の二様:交通やコミュニケーションにおける内外の障壁がなくなった半面、ソ連の解体による文化の純化意識も芽生えている。この脱中心化と求心志向の対立が、文化を複雑なものにしている。 以上の研究成果の一部は、『スラブ・ユーラシアの変動』領域研究報告輯41号、63号(1997、1998)に発表されている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 望月哲男: "ドストエフスキー論をめぐって-バフチンの内部と外部" ミハイル・バフチンの時空(せりか書房). 108-117 (1997)
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[Publications] 望月哲男: "ロシア世紀末の自画像1-3" しゃりばり(北海道開発問題研究調査会). No.10-12. 15-19,15-20,29-35 (1997)
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[Publications] 浦 雅春: "アレクサンドル・ゲニス「赤いパン-ソビエト権力の料理史」" 「スラブ・ユーラシアの変動」領域研究報告輯. No.21. 48-52 (1997)
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[Publications] 沼野充義: "枠を変える-ロシア文化の現在-" 現代思想. Vol.25-4. 40-53 (1997)
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[Publications] 亀山郁夫: "ゴ-リキ-とスターリン" 思想. No.6. 36-62 (1997)
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[Publications] 宇佐見森吉: "エレ-ナ・シュワルツの世界(1)" 「スラブ・ユーラシアの変動」領域研究報告輯. No.41. 22-33 (1997)
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[Publications] 沼野充義: "ユートピアへの手紙-世界文学からの20の声-" 河出書房新社, 1-238 (1997)
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[Publications] ユ-リ-・ボ-レフ/亀山郁夫編訳: "スターリンという神話" 岩波書店, 1-302 (1997)