1995 Fiscal Year Annual Research Report
トリメチレンメタン及びヘテロ原子同族体遷移金属錯体の合成・物性・有機合成への応用
Project/Area Number |
07216243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 功 大阪大学, 工学部, 教授 (70029049)
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Keywords | オキソジメチレンメタン錯体 / パラジウム錯体 / 白金錯体 / π-アリル錯体 / 求核置換反応 |
Research Abstract |
トリメチレンメタン遷移金属錯体あるいはそのヘテロ原子同族体錯体は、構造、物性あるいは反応性等の点で大変興味深いばかりでなく、有機合成化学的にも極めて重要な化合物である。本申請者はこれまでに、2位にメトキシメトキシ基を持つπ-アリル錯体と水酸化物イオンとの反応機構を明らかにし、その情報をもとにして、遷移金属との酸化的付加によってメトキシメトキシ錯体を生成すると同時に自己的に直ちにオキソジメチレンメタン錯体を生成するような新しいアリル化合物すなわち、アセタール中心炭素にメチル基をもった化合物を合成し、上記の目的を達成することができた。さらに触媒量の0価パラジウムの存在下この基質とノルボルネン類とを作用させることによって〔2+1〕付加環化物であるシクロプロパン誘導体が接触的に生成する系を開発することにも成功した。また、オキソジメチレンメタン遷移金属錯体は、金属の性質によって酸素上の電荷密度がかなり大きく変化することを見い出しているが、果たしてこれらが求核反応性を示すのか否か、示すとすればどの程度かを、塩化アシルあるいは塩化アルキルに対する求核性を調べることによって、定量的に知ることが可能であると考えられた。実際、臭化ベンジルとの反応を調べることによって、パラジウム錯体と白金錯体の求核性を具体的に比較することができた。また、アリル錯体は1位炭素と2位炭素が何れも求電子性を示すことが知られているが、これまでは1位での求電子性がよく知られており、アリル化などの重要な合成法として利用されてきた。しかし、その2位における求核置換反応が起こるということは、これまでパラジウム錯体については可能であることが言及されていたが、直接的な証明はなされていなかった。本申請人は、ラベルした酸素原子を含む水酸化物イオンとの反応で、ラベルした酸素を含むオキソジメチレンメタンパラジウム錯体を単離確認することによって、これを直接的に証明することができた。
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[Publications] 池田巧他: "A Novel Synthesis of(Oxodimethylenemethane)-palladium and -platinum Complexes" J. Chem. Soc., Chem. Commun.1039-1040 (1993)
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[Publications] 池田巧他: "Structural Study of (Oxodimethylenemethane)-palladium and -platinum Complexes" Organometallics. 14. 2538-2542 (1995)
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[Publications] 池田巧他: "Nucleophilicity of (Oxodimethylenemethane)-palladium and -platinum(Complexes and Derivatization to π-Allyl Complexes with Ester and Ether Functionality at 2-Position" Chem. Lett.163-164 (1996)