1995 Fiscal Year Annual Research Report
大環状ポリアミン希土類錯体による生体関連分子の認識および変換
Project/Area Number |
07230264
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
塩谷 光彦 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (60187333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 栄一 広島大学, 医学部, 教授 (30034010)
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Keywords | 大環状化合物 / 希土類錯体 / 生体分子 / 分子認識 |
Research Abstract |
本研究は、大環状配位子の特性を生かして、希土類イオンの配位環境を制御し、生体分子に対して重要な機能(認識・化学変換能、薬理活性)を付与することを目的とした。本年は、数種のテルビウム錯体を合成し、それらの蛍光核酸プローブとしての可能性を探った。 まず、N4あるいはN3O型12員環配位子を基本形とし、カルボキシル基あるいはアミド基を側鎖に導入した数種の配位子、およびそれらのテルビウム錯体を合成した。これらの錯体と核酸との相互作用を分光学的に調べた結果、アミドペンダントをもつN3O型錯体の蛍光強度がpoly(G)と共存するときのみ著しく増大することが見出された。X線結晶解析より、本錯体中のテルビウムイオンには、環状部分の3つの窒素原子と1つの酸素原子、アミドペンダントの3つの酸素原子、および3つの溶媒分子が配位し、9配位構造をとることがわかった。本錯体を278nmで励起したときの蛍光スペクトルは、490nmおよび545nmに2つのピークを示した。その溶液にpoly(G)を加えると、濃度の増大とともに2つのピークの強度が増加した。蛍光極大波長545nmにおける励起スペクトルより、本錯体のみのときにはテルビウム特有の222nmに極大波長を示したが、poly(G)を加えていくと278nmが極大波長に変化した。これは、本錯体のみの場合には錯体自身が222nmを極大とする光を吸収し、545nmの蛍光を発するが、poly(G)が共存するとpoly(G)が278nmを極大とする光を吸収し、poly(G)から本錯体へのエネルギー移動が起こり錯体が蛍光を発することが強く示唆された。 グアニン塩基を多く含む核酸としては、細胞老化・不死化・癌化と関連して、染色体末端のテロメアDNAが注目されている。今後は、テルビウム錯体とテロメアDNAとの相互作用の解明を行なう予定である。
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