1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07236101
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
富永 靖徳 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00013540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 幸司 大阪大学, 工学部, 助手 (10202342)
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Keywords | 低振動数ラマン分光 / 電解質水溶液 / 緩和 / 粘性 / 水和 |
Research Abstract |
これまでの我々の研究から、電解質水溶液(LiCl、NaCl、KCl、MgCl_2、CaCl_2等)の低振動数ラマン分光で得られた水の緩和時間の濃度変化が、これらの水溶液の粘性率と強い相関があることが明らかにされてきている。当該年度の研究では、これらの電解質水溶液のうち、NaClとRbClをとりあげ、過冷却状態までを含む高温から低温までの低振動数ラマンスペクトルの温度変化の測定を行い、これから得られる緩和時間と粘性率との関係を別の角度から明らかにした。特に、RbCl水溶液では他の電解質水溶液系と異なり、低温で粘性率が純水より小さくなる温度領域があるので、これが緩和時間にどのように反映されるかに注目した。 電解質水溶液中の水の動的構造の解析は、純水の場合と同様、系の動的感受率の虚数部χ〓(ω)を2個の減衰振動モードと1個のコール・コール型の緩和モードの重ね合わせとしてフィッティングした。このフィッティングから、緩和時間と、緩和時間も分布を表す指数β、および、各減衰振動モードの振動数と減衰定数が求められた。 モル比濃度0.04のNaCl水溶液の緩和時間は、全温度領域で水の緩和時間より遅くなった。これは、NaCl水溶液の粘性率が、水に比べて大きい事と対応しており、正水和イオンNa^+の効果として理解される。一方、モル比濃度0.04のRbCl水溶液の緩和時間は、高温側では水の緩和時間より遅いが、温度の低下と共に、水の緩和時間より速くなる温度領域が見つかった。これは、まさしく負水和イオンRb^+の効果として粘性率が水に比べて小さくなる事と対応しており、ラマンスペクトルにおける水の緩和が、粘性と強い相関をもっていることが、温度変化の観点からも、明らかになった。
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