1995 Fiscal Year Annual Research Report
配向をもった分子液体の個別運動と集団運動のダイナミックス
Project/Area Number |
07236221
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉森 明 名古屋大学, 理学部, 助手 (90260588)
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Keywords | 個別運動と集団運動 / 溶媒和ダイナミックス / 非線型緩和 / 数密度 / 動的密度汎関数法 / 配向を持った分子液体 / 化学物理 |
Research Abstract |
基底状態と励起状態で電荷分布が大きく変わる分子を分子液体に溶かし、光をあて励起状態にする。励起直後はまわりを取り囲む溶媒分子は非平衡な不安定な状態にあるが、時間が経つと安定な平衡状態に緩和する。この緩和が溶媒和ダイナミックスである。この研究では、配向を持った分子液体の個別運動における非線形効果を、動的密度汎関数法で調べた。特に、溶媒和ダイナミックスに注目して、分子動力学シミュレーション(MD)で得られている非線形効果の物理的な機構を明らかにした。 動的密度汎関数法では、溶媒分子の分布関数の時間変化を自由エネルギーの汎関数微分で計算する。ここでは非線形の効果を調べるために、自由エネルギーの汎関数微分は溶媒分子の分布関数について非線形の項まで含んだものを使う。さらに、溶媒分子の分布関数を、配向の自由度について球関数で展開して、数密度と分極場だけを取った。これらの2つの量は、線形のモデルでは全く独立に運動するが、非線形効果が強くなると、数密度の遅い緩和が分極場の緩和に強く影響すると考えられる。 数密度を考慮した計算結果は、MDの結果と定性的に一致した。すなわち、イオンの周りの溶媒分子の緩和は、中性の溶質分子の周りより緩和が遅かった。この結果は、配向を持った分子液体の、分極に関する個別運動の非線形効果に、数密度のゆらぎが重要な役割を果たしている事を示唆している。また、数密度の効果で重要な点は、分極場との結合が溶質の電荷分布によって変わる事である。溶質が中性の時、分極場は数密度と独立なので速く緩和する事が出来る。一方、溶質が電荷を持っている場合、分極場は数密度と独立ではないので、数密度の緩和を待たなければ分極場は緩和できない。そのために緩和が遅くなると考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] A.Yoshimori: "Nonlinear Quantum Effects on Electron Transfer Reaction" Chem.Phys.Letters. 235. 303-308 (1995)
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[Publications] T.Kakitani: "Present and Future Perspective of Theoretical Aspects of Photoinduced Charge Separation and Charge recombination Reactions in Solution" Prog.Reaction Kinetics. 20. 347-381 (1995)
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[Publications] A.Yoshimori: "Nonlinear Effects of Solvation Dynamics" J.Mol.Liquid.65/66. 297-300 (1995)
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[Publications] A.Yoshimori: "Effects of Diffusion on Geminate Charge Recombination" Chem.Phys.201. 35-46 (1995)