1995 Fiscal Year Annual Research Report
混合原子価状態のポリ酸の電子物性と固体電解質への応用
Project/Area Number |
07239212
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
菅田 守保 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (60262317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山瀬 利博 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (80016576)
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Keywords | ヘテロポリ酸還元種 / 金属酸化物伝導体 / 水素還元 |
Research Abstract |
本研究ではポリ酸を固体素子の基板材料として用いることを目標として、まずポリ酸を水素還元焼成して還元電子をポリ酸内に取り込み、この方法により得られる混合原子価状態のポリ酸のキャラクタリゼーション及びその電気伝導について検討した。 Keggin構造のBa_<3.5>[PTi_2W_<10>O_<40>]を水素気流中で種々の温度で焼成した場合、500℃以上では構造が維持されずW及びWO_2等が生成された。その他のポリ酸についても同様にW及びWO_2が生成されたが、その存在比はポリ酸の種類により異なり、水素との反応性に違いが見られ、また各ポリ酸とも焼成温度が100℃上昇するだけでその構造が大きく変化する焼成温度が存在することが見出された。これらのポリ酸をペレットに成型し電気抵抗を測定した結果、アニオンが縮合するにつれて電気抵抗の減少が認められた。そこで、一次元無限鎖構造をしたポリ酸である(NH_4)_6[Mo_8O_<26>(MoO_4)]を用いて350℃で水素焼成還元を行なった場合、MoO_4四面体とMoO_6八面体が組合わさった構造をしたMo_4O_<11>が主成分となり、元のポリ酸の[Mo_8O_<26>(MoO_4)]^<6->の特徴であるMoO_4四面体とMoO_6八面体の組合せを残したものとなった。これに対して全てMoO_6八面体で作られている[Mo_7O_<24>]^<6->ではMo_4O_<11>は生成されずMoO_2が主成分となった。 (NH_4)_6[Mo_8O_<26>(MoO_4)]を250℃で焼成した場合、ポリ酸の構造は保たれるが電気抵抗は6x10^7Ωとなり350℃で焼成した場合の約10Ωに比べ著しく大きいものであった。これは、このポリ酸は一次元無限鎖構造をしているがMo_8O_<26>unit中のMoO_6 octahedraが稜共有しているため、取り込まれた電子がMoO_6 octahedraに局在化するため抵抗値が大きくなったが、焼成温度が250℃から350℃の間に大きな構造変化が起こり、抵抗値の急激な減少が起こったと考えられる。この結果は前述のBa_<3.5>[PTi_2W_<10>O_<40>]といったポリ酸と同様、構造の大きく変化する温度領域が存在することを示唆した。
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