1995 Fiscal Year Annual Research Report
メタダイナミクスを取り入れた自律的発展系における創発的進化の研究
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07243212
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
時田 恵一郎 大阪大学, 理学部, 助手 (00263195)
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Keywords | メタダイナミクス / レプリケーター方程式 / 絶滅 |
Research Abstract |
数理生物学においては主にLotka-Volterra方程式などの少数自由度系のの定性的振る舞いが研究されてきた。一方統計力学においては、巨大高分子など基本となるエレメントの数が非常に大きい場合、すなわち「熱力学的極限」を仮定してきた。それにより、ランダム高分子や淡白質の折り畳みと機能発現の問題などをかなり厳密に取り扱うことができた。しかしながら、これらの少数自由度と無限自由度の間を埋める数理的な「有限多体系」の一般的な理論は存在しない。特に、応募者が扱おうとする「自由度および相互作用を自己決定する自律発展系」においては、方程式を構成する変数の数そのものが内部自由度として時間変動するので、従来の解析的手法のみではもはや理解は困難である。本研究の目的は、従来外から与えられていた様々な複雑適応系におけるパラメータを系が自己決定し、その影響により進化が促進されるという状況を人工生命的手法により見いだすことにある。すでに今年度、応募者は、極めて一般的で適用範囲の広範な大自由度ランダムreplicator方程式系に有限個体数効果を導入した「絶滅ダイナミクス」を提案し、従来の有限個体数効果のないreplicator方程式系とは全く異なるいくつかの重要な振舞いを見い出した。例えば、環境改変から大絶滅が起こるまでの「誘導時間」の存在は、グ-ルドらの言うところの進化における「断続平衡仮説」を強力に裏付けるものである。また、最初にどうなに多くの種類の種がいたとしても、最終的な生き残り種のバラエティが有限になってしまうという結果は、自然界で確認されている食物連鎖数が高々5,6種でしかないという事実を説明する。応募者は、この計算機シミュレーションによる「絶滅ダイナミクス」の振舞いを解析的に理解する統計力学的手法を開発する見通しを得ている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kei Tokita and Ayumu Yasutomi: "A New View on Mass Extinction" Proceedings of Artificial Life V. (掲載予定). (1996)
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[Publications] Kei Tokita and Ayumu Yasutomi: "Global Stability and Induction Phenomena in Replicator Equations with ‘Extinction Thresh-old'" Proceedings of Kyoto Conference on Mathematical Biology. (掲載予定). (1996)