1995 Fiscal Year Annual Research Report
分子内シャペロンとして働くプロテアーゼ・プロ領域の構造と機能
Project/Area Number |
07253203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松沢 洋 東京大学, 農学部, 教授 (00011966)
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Keywords | セリンプロテアーゼ / プロテアーゼ前駆体 / プロ領域 / シャペロン / 分子内シャペロン / 分子間シャペロン / プロテイン・フォールディング / プロセシング |
Research Abstract |
アクアライシンIは高度好熱菌Thermus aquaticusが菌体外に分泌するサチライシン型セリンプロテアーゼである。本酵素の1次構造は他のサチライシン型酵素と高い相同性(約40%)を示し、3次構造も相同性が高いと予想される。本酵素のN末端プロ領域(Nプロ)は、他のサチライシン型酵素のNプロと同様、前駆体構造の安定化と成熟酵素部分のフォールディングを促進する分子内ならびに分子間シャペロンとして機能する。サチライシン型酵素のNプロ全体の1次構造の相同性は低いが、N末端側に6残基の保存配列が存在する。サチライシンEなどのNプロは、その成熟酵素の活性を競争的に阻害する。そこで本研究では、アクアライシンのIのNプロによる阻害活性とNプロの保存領域の変異が阻害活性に与える影響を調べた。 1.アクアライシンIのNプロは成熟酵素に対し強い阻害活性を示した。阻害定数K_iはアクアライシンIに対し4.9×10^<-11>Mと非常に小さく、Nプロの本酵素との相互作用が強いことがわかった。 2.アクアライシンIのNプロはサチライシンのBPN'とCarlsbergの2種の酵素が活性を阻害した。阻害定数K_iはそれぞれ5.8×10^<-9>M、1.8×10^<-10>Mとこの場合もかなり小さく、これらの酵素がアクアライシンIのNプロと相互作用する部分はアクアライシンIと相同性が高いことが示唆された。 3.アクアライシンIのNプロの6残基保存配列はYIVVFKである。保存配列の中の下線を引いたValをGly(サチライシン型)とThrに置換した変異型Nプロを作製した。両変異型とも阻害活性は、アクアライシンIに対しては弱くなり、サチライシンBPN'に対しては強くなった。これより、6残基保存配列部分が酵素領域との相互作用に重要であることが示唆された。
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