1995 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス応答におけるCa^<2+>とCa^<2+>依存性タンパク質の役割
Project/Area Number |
07253227
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
飯田 秀利 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (70124435)
|
Keywords | ストレス応答 / 熱ショック応答 / カルシウム / シグナル伝達 / カルモデュリン / プロテインキナーゼ / 酵母 / saccharomyces cerevisiae |
Research Abstract |
本研究の目的は、ストレス応答初期過程におけるシグナル伝達の分子機構をCa^<2+>シグナルを中心に、酵母を用いて解き明かすことである。カルモデュリンはCa^<2+>を結合することによって活性化する制御タンパク質であり、20種類以上もの酵素または構造タンパク質を制御する。酵母においては、カルモデュリンの遺伝子(CMD1)は1コピー存在する。CMD1欠損株はあらゆる温度下で増殖できないが、カルモデュリン分子のN末端半分(CAMN)またはC末端半分(CAMC)だけをもつ変異株は通常の温度(25℃)では増殖可能である。野生株は25℃から36℃にシフトされると、52℃の熱処理に対して抵抗性を獲得するが、CAMN株とCAMC株はその能力が低下していた。また、カルモデュリンはCa^<2+>/カルモデュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaM kinase II)をCa^<2+>濃度依存的に制御する。酵母においては、2種類のCaM kinaseII遺伝子(CMK1とCMK2)が存在するが、その二重欠損変異株は正常に増殖できる。しかし、その株の熱抵抗性獲得能はCAMN株とCAMC株と同じように低下していることが明らかとなった。これらの結果は、カルモデュリンとその制御下にあるCaM kinase IIが熱抵抗性の獲得に機能することを示している。 カルシニューリンはCa^<2+>/カルモデュリン依存性のタンパク質ホスファターゼであり、免疫抑制剤FK506によって阻害される。酵母においては、液泡がCa^<2+>のプールとして重要であり、その膜に存在するH^+-ATPaseが細胞質のCa^<2+>濃度の調節に関与することを我々は既に報告している。今回、H^+-ATPaseのサブユニットの欠損株(vma3)は、(1)高濃度のCa^<2+>ストレス下でFK506に感受性になること、および(2)カルシニューリンのサブユニットの欠損株(cnb1)と合成致死になることを発見した。しかも、そのFK506の効果は、カルシニューリン活性を阻害する特異的結合タンパク質FKBP-12の存在下でのみ見出された。また、FK506は細胞内遊離Ca^<2+>濃度を減少させる効果があった。これらの結果は、カルシニューリンとH^+-ATPaseが共同して高濃度のCa^<2+>ストレスに対応し、細胞内遊離Ca^<2+>濃度を正常に保つことを示唆している。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Iida,H.: "Calmodulin-dependent protein KinaseII and calmodulin are required for induced thermotolerance in Saccharomyces cerevisiae" Curr.Genet.27. 190-193 (1995)
-
[Publications] Tanida,I.: "Coperation of calcineurin and vacuolar H^+ATPase in intracellular Ca^<2+> homeostasis of yeast cells" J.Biol.Chem.270. 10113-10119 (1995)
-
[Publications] 飯田秀利: "免疫組織化学法-エピトープ・タギング法を中心として-" 日本臨版. 54. 731-736 (1996)