1995 Fiscal Year Annual Research Report
標的遺伝子組換え法による受精の分子機構に関する研究
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07260202
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
馬場 忠 筑波大学, 応用生物化学系, 助教授 (40165056)
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Keywords | 標的遺伝子組換え / 受精 / 精子 / セリンプロテアーゼ / アクロシン / 卵透明帯 / アクロソーム / マウス |
Research Abstract |
精子に局在するトリプシン様セリンプロテ-ゼアクロシンは,受精の際に卵透明帯を溶解して精子の卵への侵入を容易にさせるものと考えられてきた。標的遺伝子組換え法を用いてアクロシンを欠損するモデル変異マウスを作製・解析した結果,その変異マウスは野性種と同等の自然交配能を有していることが判明した。しかし,このアクロシン欠損マウス精子を用いて生体外受精試験を行うと,野性種のものよりも卵透明帯への精子の侵入にわずかな遅延が認められた。また,アクロシン以外の新規セリン系プロテ-ゼ(カッパイン)が精子に存在すること,さらにアクロシンがカッパインの活性化を促進させていることなどが明らかとなった。このマウスカッパインの構造と受精での機能・役割を明確にする目的で,カッパインをコードするcDNAと染色体遺伝子クローンの単離と解析を行った。マウスカッパインは367アミノ酸残基より成る前駆体として合成され,36残基の軽鎖と300残基の重鎖がひとつのジスルフィド結合により連結されているような成熟型酵素にプロセシングされることが明らかとなった。ほかのセリンプロテアーゼとの一次構造の比較から,カッパインがトリプシンやアクロシンとは異なる基質の特異性を有していることも示唆された。また,マウスカッパイン遺伝子は,全長約5キロ塩基対であり,5個のエクソンより構成されていた。サザンブロット分析の結果,この遺伝子がマウス染色体上でシングルコピーとして存在することも明確となった。カッパイン遺伝子は精巣特異的に発現しており,精子形成過程ではアクロシンやほかのアクロソームタンパク質遺伝子と同様にパキテン期精母細胞ですでに転写が開始しており,半数体精細胞でその発現が最も盛んであった。このカッパイン生体内機能解析のために,ターゲティングベクターを構築してES細胞経由で遺伝子相同組換えを試みたが,満足のいく結果が得られなかった。現在,ターゲティングベクターを再構築して,目的のES細胞クローンを単離することを試みている。
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[Publications] Etsuko Mori: "Amino Acid Sequences of Porcine sp38 and Proacrosin Required for Binding to Zona Pellucida" Developmental Biology. 168. 575-583 (1995)
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[Publications] Jiro Toshima: "Identification and Characterization of a Novel Protein Kinase, TESK1, Specifically Expressed in Testicular Germ Cells" Journal of Biological Chemistry. 270. 31331-31337 (1995)
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[Publications] Deborah A. O'Brien: "Boar Proacrosin Expressed in Spermatids of Transgenic Mice Does Not Reach the Acrosome and Disrupts Spermatogenesis" Moleculan Peproduction and Development. 43. 236-247 (1996)
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[Publications] 馬場忠: "哺乳動物精子アクロシンの受精での機能と役割" 日本胚移植雑誌. (印刷中). (1996)