1995 Fiscal Year Annual Research Report
化石DNAの遺伝子情報にもとづく新生代哺乳類の分子系統学的研究
Project/Area Number |
07265210
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小澤 智生 名古屋大学, 理学部, 助教授 (80037233)
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Keywords | 化石DNA / ミトコンドリアDNA / 分子系統学 / 新生代 / 哺乳類 / テチテリア / ウシ類 / 家畜化の起源 |
Research Abstract |
近蹄類テチテリアに属する長鼻目ゾウ亜科の3種(アフリカゾウ,アジアゾウ及び化石種のケナガマンモス),海牛目の3種(ニシインドヨウマナティー,ジュゴン,絶滅種のステラーカイギュ-)のミトコンドリアDNAチトクロームb遺伝子1005塩基対の配列決定を行ない,塩基配列データに基づいて,系統関係の解析を行った結果,テチテリア内の系統においては,分岐の早い順に長鼻類と海牛目の分岐, 海牛目のカイギュ-科とジュゴン科の分岐,ジュゴン科内でジュゴンとステラーカイギュ-につながる系統の分岐,長鼻類の中でアフリカ象の系統とアジアゾウとケナガマンモスの共通の祖先の分岐,そして最後にアジアゾウとケナガマンモスの系統の分岐が示された.ゾウ科ゾウ亜科の系統関係においては,ケナガマンモスとアジアゾウは姉妹群を形成し最も近縁であることが今回の研究で明確になり,長らく論争のあったゾウ亜科内の系統問題は決着をみた. 次に,ウシの家畜化が始まる以前のイングランドの上部更新統産の化石ウシBos taurus longifronsのミトコンドリアDNAのD-loop領域約0.7kbpの塩基配列を決定し,家畜品種の塩基配列のデータを加え,系統樹を作製し家畜ウシの起源に関する考察を行った.その結果,本化石亜種はヨーロッパ系品種のクラスターに含まれ,インド系品種との間には大きな分子距離を得た.この事実は,家畜化以前に,ヨーロッパ系品種とインド系品種との間にすでに大きな塩基配列の違いが存在していたことを示し,それらが独立に家畜化されたとする家畜ウシの二地域起源説が支持された.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tomowo Ozawa: "Early to Middle Miocene molluscan fossils from the Megami and Ebie limestones in Shizuoka Prefecture and their implications for the formation of a Miocene coral-algal reef within the Japanese faunal realm" Trans.Proc.Palaeont.Soc.Japan,N.S.,. 179. 175-183 (1995)
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[Publications] Tomowo Ozawa: "A new Turbo (Batillus) species from Chinese coasts" Venus. 54. 269-277 (1995)
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[Publications] Yukimitsu Tomita: "A new record of Youngofiber (Casteridae : Mammalia) from the Early Miocene of Kani City,central Japan" Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,Ser.C,. 21. 103-109 (1995)
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[Publications] 小澤智生: "日本の新第三紀暖流系軟体動物群の概要" 化石. 58. 20-27 (1995)
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[Publications] 小澤智生: "南西諸島のマングローブにおけるセンニンガイの消長と後氷期気候変動" 名古屋大学古川総合研究資料館報告. 11. 23-33 (1995)
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[Publications] 熊沢慶伯: "生命と地球の共進化-分子状酸素の発生と消費をめぐる共進化-" 月刊地球. 17. 464-471 (1995)