1995 Fiscal Year Annual Research Report
発生張力に依存して心筋トロポニンのCa親和性が変化する生理学的意義
Project/Area Number |
07266223
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
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Keywords | 心筋 / Caイオン / 短縮 / 伸張 / トロポニン / クロスブリッジ |
Research Abstract |
これまでの研究で、心筋のトロポニンCのCa感受性は、発生張力に依存して変化することが示唆された。本年度は、このメカニズムが生理的な収縮・弛緩サイクルのなかで実際に機能しているか否か検証した。フェレットの右心室から得られた乳頭筋の一端を張力測定用のトランスデューサーに、他端を筋長変化用のモーターのレバ-に取り付け、標本の表層細胞内にエクオリンを圧注入して、標本に筋長変化を与えたときの細胞内Ca信号と張力の変化を同時記録した。単収縮の経過中に筋長を短縮させると細胞内Caイオン濃度は一過性に増加した。このCaイオン濃度変化は筋長変化そのものよりも、張力変化、および筋長変化を与えた時の細胞内Caイオン濃度と関係があった。初期長を変えたり、筋長を単収縮の経過中に遅いスピードで変化させると、収縮中に急速に筋長変化を行った時に比べてCaイオン濃度変化は減少した。正常液中で筋を伸展してもCaイオン濃度には変化が見られなかったが、カフェイン処理筋では筋の伸展によりCaイオン濃度は減少し、その時間経過は進展のよる活動張力の増加分の時間経過とよく一致した。外液Caイオン濃度を変化させ張力のピークが増高した時には、Ca信号の減衰時間は短縮した。初期筋長を変えたり、BDMで処理して発生張力を変化させても同様な関係が発生張力とCa信号の減衰時間との間で見られた。しかし、イソプロテレノールを作用させて、張力を増強させた時にはCa信号の減衰時間の短縮が著しく、上記の関係が見られなかった。これらの結果は、筋小胞体の機能がリン酸化などにより修飾されていない心筋では、発生張力が低下するとCaイオンに対するトロポニンCの親和性が低下して筋の弛緩が促進され、発生張力が増加するとCaイオンに対するトロポニンCの親和性が増加して、より張力が発生するというメカニズムが生理的条件下で働いていることを示唆している。
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[Publications] Kurihara, S.: "Tension-dependent changes of the intracellular Ca^<2+> transients the ferret ventricular muscles" Journal of physiology. 489. 617-625 (1995)
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[Publications] Kurihara, S.: "Cross-bridge-dependent changes in the intracellular Ca^<2+> concentration in mammalian cardiac muscles." Japanese Heart Journal. 47. (1996)
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[Publications] Kurihara, S.: "Calcium as Cell Signal" Maruyama, K., Nonomura, Y., Kohama, K, Igaku-Shoin, 293 (1995)
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[Publications] Komukai, K.: "Molecular and Cellular mechanisms of Cardiovascular" Endoh, M., Iijima, T., Morad, M., Scholtz, H., Springer-Verlag Tokyo, (1996)