1995 Fiscal Year Annual Research Report
染色体テロメアを作用点とした新しいがんの分子標的治療の開発
Project/Area Number |
07274225
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 冬木 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (30184493)
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Keywords | テロメレース / 白血病 |
Research Abstract |
腫瘍細胞に特異的に存在すると考えられるテロメレースは、新しい抗腫瘍剤の作用点としてきわめて有望な候補の一つと期待される。ヒト・テロメレースはその活性が非常に低いために、高感度かつ特異性の高い検出方法の開発が望まれていたが、我々はテロメレース産物をPCRによって遺伝子増幅し解析することが非常に有用であることを見いだした。そのようにして得られた"Stretch PCR法"は、現在、汎用されている"TRAP assay"と比較すると、感度、特異性のみならず、定量性において大変優れた方法であることが明らかになった(Tatematsu et al., submitted)。すなわち、PCRを用いる場合、反応の基質となるテロメレース産物の量(これは活性と比例すると考えられる)と最終的なPCR生成産物の量とは必ずしも相関しない場合が多いが、我々は反応条件、プライマーの配列を十分に検討することにより、非常に広い範囲のテロメレース活性について良好なdose-response曲線を得ることに成功した。このような検出系の特徴は、たとえば、阻害剤を開発するためにはきわめて重要な要件であると考えられる。 次に、我々は慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)および健常者由来の血液細胞について"Stretch PCR法"により、それぞれテロメレース活性を定量化することに成功した(Tatematsu et al., submitted)。その結果、正常末梢血有核細胞にはポジティブ・コントロールとした白血病細胞株U937の1/10^4以下の微量のテロメレース活性しか存在しないことが分かった。CML慢性期においては、正常血液細胞と同程度の活性しか存在しなかったが、急性転化症例ではU937細胞の数+%の強いテロメレース活性が検出された。一方、AMLのうち初発例では、一般に弱い活性しか検出されなかったのに対し、再発例では強い活性が検出された。以上の事実は、テロメレースが正常細胞ではほとんど発現しておらず、腫瘍細胞においてもCMLの急性転化例やAML再発例など、従来の抗がん剤が無効であることの多いいわゆる難治性がんでおきていることを示している。この結果、テロメレースの阻害剤の開発が難治性がんに対する新たな抗腫瘍療法としてますます期待された。以上の平成7年度における我々の成果の上にたち、平成8年度以降においては、テロメレースの活性化機構を明らかにして、阻害開発のための基礎的知見を得ると同時に、薬剤のスクリーニングに適したより簡便な検出系の開発に努める。
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[Publications] Kajita, Y., Nakayama, J., Aizawa, M., and Ishakawa, F.: "The UUAG-specific RNA binding protein, hnRNP D0: Common modular structure and binding properties of 2xRBD-Gly family" J. Biol. Chem.270. 22167-22176 (1995)
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[Publications] Kajita, Y., Kobatake, E., Ishikawa, F., and Aizawa, M.: "Bioluminescent detection of RNA with sequence-specificity using RNA binding protein-luciferase fusion protein" J. Biotechnol.43. 63-70 (1995)