1996 Fiscal Year Annual Research Report
近代における世界志向システムと地域社会の相互的ダイナミクス
Project/Area Number |
07301071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船曳 建夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90165457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 一敏 筑波大学, 歴史人類学系, 講師 (50179321)
太田 好信 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 助教授 (60203808)
古谷 嘉章 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 助教授 (50183934)
田辺 繁治 国立民博, 第2研究部, 教授 (00045262)
山下 晋司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60117728)
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Keywords | 近代 / 世界志向性 / 地域社会 / ネオ・コロニアリズム / ポスト・モダン / 国家間システム / 文化の生成 / グローバライゼーション |
Research Abstract |
平成8年度は2回の研究会と個別の討議、そして、アメリカ人類学総会でのワークショップを行った。まず、平成7年度に引き続き、各分担者の専門調査地域の社会における世界志向システムの現れと働き、並びに、地域社会のそれに対する応答としての活動と表現、の双方に関するデータについての考察を行った。そこでは、現在のグローバリゼーションの進行の認識と、それによる、文化人類学自体をふくむ、世界の各国家・地域における個別の文化・社会活動の発展についての評価が分かれた。すなわち、システムの周辺である日本において西欧と関係を持ちつつも独自の発展を遂げた日本の文化人類学(民族学)は、今後、いわゆる国際化によって、同一の国際学会というシステムの中で活動を行った方がよいのか。それは、かえって、世界システムといいながら実は「西欧」という一地域の世界大のヘゲモニ-の中に取り込まれていくことにすぎないのか。この議論の対立は、理論におけると共に、実践の難しい問題をふくんでいる。田辺の提出したタイにおけるエイズに対する、タイの宗教・文化の中での独自の取り組みも、それは西欧の医療を否定するものではないが、それをふくみつつ、その医学に対しては異なる評価を行いつつ世界志向システムと一線を画した対処だとも言える。山下のバリにおける観光、関本のインドネシアのバティック産業にも同様の構図を持った問題が見いだされる。こられの「日本の人類学」「タイのエイズに対する取り組み」などが、世界志向システムとしての国際的なアカデミズム、西洋医学による医療活動と、どのようなダイナミズムを今持ち、これからその関係はどのような形に向かうのか、は今後の議論にゆだねられた。しかし、ここまでの成果の一部、日本の人類学についての考察は、1996年11月のアメリカ人類学総会においてワークショップの形で発表された。
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[Publications] 船曳建夫: "「人間とは何か」" 編書『新たな人間の発見』岩波書店. 印刷中. (1997)
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[Publications] 田辺繁治: "「苦しみと人間の可能態-北タイにおける霊媒カルトとHIV感染者グループ」" 編書『新たな人間の発見』岩波書店. 印刷中.
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[Publications] 山下晋司: "「<南>へ」" 編書『移動の民族誌』岩波書店. 31-59 (1996)
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[Publications] 床呂郁哉: "「越境の民族誌」" 編書『移動の民族誌』岩波書店. 159-186 (1996)
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[Publications] 古谷嘉章: "「近代への別の入り方」" 編書『思想化される周辺世界』岩波書店. 255-280 (1996)
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[Publications] 太田好信: "「ポストコロニアル批判を越えるために」" 編書『思想化される周辺世界』岩波書店. 283-307 (1996)
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[Publications] 船曳建夫: "『文化人類学のすすめ』(共編著書)" 筑摩書房(印刷中), (1997)
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[Publications] 船曳建夫: "『新たな人間の発見』(共編著書)" 岩波書店(印刷中), (1997)