1995 Fiscal Year Annual Research Report
国際経済環境と産業構造が変化する中での日本型資本主義の調整様式の変容に関する研究
Project/Area Number |
07303015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Co-operative Research (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 鋭夫 名古屋大学, 経済学部, 教授 (10024978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海老塚 明 大阪市立大学, 経済学部, 助教授 (70176783)
花田 昌宣 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
井上 泰夫 名古屋市立大学, 経済学部, 教授 (80160000)
都留 康 一橋大学, 経済研究所, 教授 (00155441)
平野 泰朗 福岡県立大学, 人間社会学部, 助教授 (20165195)
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Keywords | 国際経済環境 / 産業構造変化 / 企業主義的レギュラシオン / 賃労働関係 / 輸出主導型成長 / 制度的再編成 / 金融再編成 / 階層的市場・企業ネクサス |
Research Abstract |
平成7年度は、70年代中葉から現在に至る日本経済を対象に、日本型資源主義の調整様式の歴史的展開過程を総合的に検討した。特に、80年代中葉にいたる典型的な「輸出主導型成長」の時期と80年代中葉以降の平成景気・平成不況の時期に分けて成長パタンを析出し、それを可能とした「企業主義的レギュラシオン」の調整機能を、企業組織、「賃労働関係」、企画間関係、金融関係、産業構造、そしてシステム全体から生み出されるマクロ的調整に関して分析することを試みた。具体的な研究成果は、以下のとおりである。 (1)日本型企業の企業組織に関しては、内部組織的要因と外部労働市場的要因が構造的に組み合わされることによって、企業による労働者の統合・包摂が強化され、インセンティブ・メカニズムと技術改新への高い対応力が生み出された点が観察された。(2)「賃労働関係」の制度的特質に関しては、特に正規従業員の終身雇用と非正規従業員の柔軟な雇用調整に注目し、前者の組織内的フレキシビリティと後者の外的フレキシビリティとが補完的に接合し、経済変動に迅速に対応したことが計量経済学的に検証された。また、企業規模別及び産業別の賃金決定と「春闘」の役割については、「春闘」のもつ賃金平準化効果の弱まりと産業別の賃金調整が検証された。(3)企業間関係については、系列取引関係と階層化された労働市場とが連動しつつ、リストラクチャリングが展開したことが検討された。(4)金融関係については、特に株式相互持ち合いのもとでの金融自由化の進展が、資金調達構造の変化と株価形成の上昇をもたらし、それが企業の投資行動を促進させ過剰蓄積が遂行された点が分析された。(5)以上の諸領域での調整様式は相互補完関係をもち、マクロ経済的には、輸出と設備投資とが強い連関をもって展開する「輸出-投資主導型」の「成長体制」が生み出されたことが分析された。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 平野泰朗: "企業の福利厚生と社会政策" 福岡県立大学紀要. 4(1). 57-73 (1995)
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[Publications] 平野泰朗: "市場・組織・ネットワークと新たな生産性ノルム" 福岡県立大学紀要. 4(2). 29-47 (1996)
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[Publications] Tsuru,Tsuyoshi: "The Limits of Enterprise Unionism (with J.Rebitzer)" British Journal of International Relations. 33. 459-492 (1995)
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[Publications] 都留 康: "地方公共部門における組合員の組合参加状況" 経済研究. 46. 323-333 (1995)
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[Publications] 井上泰夫: "レギュラシオン理論の可能性" 神奈川大学評論. 22(号). 49-55 (1996)
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[Publications] 海老塚明、磯谷明徳、植村博恭: "戦後日本経済へのレギュラシオン・アプローチ(1)(2)" 経済学雑誌. 96(516), 97(1), (近刊). (1996)
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[Publications] 磯谷明徳、植村博恭: "「制度の経済学」と貨幣・労働のダイナミクス" 日欧社会経済学会年報. 1(号)(近刊). (1996)
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[Publications] 植村博恭: "戦後蓄積体制における成長と分配-日本の経験" 日仏経済学会Bulletin. 17(号). 45-57 (1995)
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[Publications] 遠山弘徳: "賃金交渉制度と労働生産性シェアリング" 法経論集(静岡大学). 75(号). 1-25 (1996)
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[Publications] 宇仁宏幸: "日本の輸出主導型成長" 経済理論学会年報. 32. 90-105 (1995)
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[Publications] 鍋島直樹: "政治思想としてのケインズ主義" 経済科学. 43(1). 23-41 (1995)
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[Publications] 磯谷明徳: "日本型企業システムとレギュラシオン理論" 経済学研究(九州大学). 60. 43-61 (1995)
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[Publications] 九州大学国際経済構造研究会(編): "経済、経営構造の国際比較試論" 九州大学出版会, 304 (1995)