1996 Fiscal Year Annual Research Report
国際経済環境と産業構造が変化する中での日本型資本主義の調整様式の変容に関する研究
Project/Area Number |
07303015
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Section | 総合 |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 鋭夫 名古屋大学, 経済学部, 教授 (10024978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 泰夫 名古屋市立大学, 経済学部, 教授 (80160000)
海老塚 明 大阪市立大学, 経済学部, 助教授 (70176783)
花田 昌宣 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
平野 泰朗 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (20165195)
都留 康 一橋大学, 経済研究所, 教授 (00155441)
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Keywords | 企業主義的レギュラシオン / 制度分析 / 階層的市場-企業ネタサス / 産業的福祉 / 労使交渉(コミュニケーション) / 不均等生産性上昇 / 金融的調整様式 / 国際的レギュラシオン |
Research Abstract |
本報告期間における研究は、1996年12月にパリで開催された「日仏レギュラシオン・コロック:日本資本主義と今日の危機」において総括的集約が行われたので、それに基づいて概要を記す。(1)賃労働関係:現在の不況下で、大企業男子正規従業員の「雇用妥協」は、その対象範囲がスリム化し一部の労働者に限定されていく動きがあるものの、日本的雇用慣行が全体として大きく変化している兆候は見られず、それを支えるインセンティブ・メカニズムも崩れてはいない。しかし、現在、下請構造の「流動化」が進行しており、これが企業組織、分断的労働市場、階層的下請関係のもっている「構造的両立性」や労使交渉制度に影響を与えていくかもしれない。(2)金融システム:1970年代以降、日本の「金融的調整様式」は、国債発行に伴う債権市場の発達と金融の国際化によって、大きな変容を被った。その結果、1980年代にはリスク管理は不十分なものとなり、80年代後半の「バブル」形成の一因ともなった。「自由化」の圧力のもとで持株会社の解禁と株式持ち合い比率の低下が進行していることは、注意すべきことである。(3)産業構造およびマクロ経済構造:70年代以来の「輸出(・投資)主導型成長」の結果、部門前の「不均等生産性上昇」が生み出された。このようななかで、90年代不況に進行して、マクロレベルで利潤率が低下しているのは注目に値する。90年代不況のなかでは、「ネガティブな脱工業化」が進行している。(4)国際関係:アジア圏においては、日本とアジア諸国との間に重層的コスト構造に基づいて「雁行型」国際分業が展開している。これが、アジア圏での国際化の特徴的形態である。以上のように、本研究は、現在の段階において、すでに分析結果の基本的輪郭は定まってきたが、細部に関してはさらなる研究が進められる必要がある。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 山田鋭夫: "企業主義的調整様式と新しい差別化" 栗原編『講座差別の社会学』弘文堂. 311-323 (1996)
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[Publications] 海老塚明・磯谷明徳・植村博恭: "戦後日本経へのレギュラシオン・アプローチ-「階層的市場-企業ネクサス」論(1),(2)" 『経済学雑誌』第96巻第5・6号及び第97巻第2号. (1996)
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[Publications] 都留康: "無組合企業の労使関係" 日本労働研究機構・報告書. 478 (1996)
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[Publications] 花田昌宣: "賃金決定と労使妥協-日本における資本と労働のレギュラシオン" R.ボワイエ・山田編著『〈レギュラシオン・コレクション3〉ラポール・サラリアール』藤原書店. 327-360 (1996)
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[Publications] 宇仁宏幸: "レギュラシオンをともなう資本蓄積モデル" 『大阪産業大学論集:社会科学編』. 104号. (1997)
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[Publications] 鍋島直樹: "ケインズ派金融経済論の過去と現在-金融構造とマクロ経済変動" 『経済学雑誌』. 第97巻第4号. (1996)
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[Publications] 平野泰朗: "日本的制度と経済成長" 藤原書店, 235 (1996)
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[Publications] 井上泰夫: "〈世紀末大転換〉を読む" 有斐閣, (1996)