1996 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス環境下における形質間のトレードオフとその最適制御のための生理形態学的基礎
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07306001
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Section | 総合 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋田 重誠 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10251498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩間 和人 北海道大学, 農学部, 助教授 (70144219)
寺島 一郎 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (40211388)
山内 章 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30230303)
窪田 文武 九州大学, 農学部, 教授 (50136602)
石原 邦 東京農工大学, 農学部, 教授 (70014925)
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Keywords | 環境ストレス / 水稲 / 畑作物 / 生態学 / 生理学 / 水分 / トレードオフ |
Research Abstract |
本年度は2年目であり、各研究グループとも研究の進展により以下のような興味ある結果が得られた。畑作物の水分ストレス関係では、1)ダイズ、品種エンレイに比べてタチナガハは幼植物でも根系が良く発達し、この相違は遺伝的性質の相違によるものである。根系の発達の品種間の相違は、主として分枝根数の違いにあり、この相違は低水分土壌条件において一層顕著となった。2)蒸散速度と根量の異なるバレイショ2品種の接木個体間における耐乾性の差異は、主として台木の種類、すなわち根量の差異に起因した。3)干ばつ下で乾物生産が優れ、収量も高い在来陸稲品種はそうでない品種に比べ深い土層の根量分布と炭素分配率が高く、効率的に水を吸収していることが明らかにされた。4)塩溶液中で根の応力変化を測定することにより、外皮および内皮のイオン透過特性を評価できるものと考えられた。5)種子根の可塑的発育は、1本で生育させたとき(T2)に最も大きく発揮され、根系サイズが大きくなるにつれて、その程度は減少した。ここでも、L型1次側根の可塑性の程度が最も大きかった。これらのことより、根の発育における可塑性は、機能的な可塑性に密接にリンクしていると結論された。6)キュウリなどの低温感受性植物を光・低温条件におくと光化学系Iが損傷される。これは、低温ではH2O2消去が生産においつかないためであることなどが明らかになった。 また、水稲における各種ストレスに対しては1)植物の生育と水質浄化力の関係について分析を行い、水質浄化力は植物の乾物生産力に強く依存することを明らかにした。また、これまでの研究からイネ、コムギなど食用作物の多くにおいて富栄養化水域では圃場と同等の収量生産が得られるのに対し、貧栄養化水域では生産が著しく減退する現象が認められ、乾物生産量は培地の水質に依存することが見い出された。2)コシヒカリ、長・短稈品種を用いて、水温と窒素一ストレス下における水稲のN代謝、生育及び収量の変化を調査した、本実験では生育初期と中期の水温は稲体の遊離アミノ酸組成、全籾数を通して収量に関係していた。4)イネの低温邸酸素濃度下における出芽過程に関与するアミラーゼの遺伝子支配の機構が明らかにされた。以下のような結果が得られた。
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[Publications] Iwama,K.et al.: "Effect of drought on the growth of two potato varieties with different root mass" Books of Abstracts 4th ESA-congress,7-11 July 1996,Wageningen,The Netherlands. 1. 94-95 (1996)
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[Publications] Miyazaki A,W.Agata,F.Kubota and X.Song: "Effects of salt concentration on the dry matter and yield production of some crops grown by the floating culture system." Crop research in Asia:achievement and perspective. 438-439 (1996)
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[Publications] 野口 航: "Aoclimation of respiratory properties of leaves of Spinacia oleracea L,a sun species,and of Alocasia macrorrhiza(L)G.Don.,a shade species,to changes in growth irradiance" Plant and Cell Physiology. 37. 377-384 (1996)
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[Publications] T.Hirasawa: "Crop response to seasonal soil water fluctuation in Japan" Proceeding of the 2^<nd> Asian Crop Science Conference. 2. 261-264 (1996)
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[Publications] 折谷隆志・下山有紀子: "水温並びに窒素ストレス下における長・短稈品種の生育と収量構成 要素の変化" 日作紀. 66・別号1. 266-267 (1996)
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[Publications] 秋田重誠 戸炳星: "水稲の出芽速度に見られる品種間差の機構" 65・別号1. 128-129. (1996)