1996 Fiscal Year Annual Research Report
(e,2e)運動量分光法による電子軌道と化学結合の研究
Project/Area Number |
07404032
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇田川 康夫 東北大学, 科学計測研究所, 教授 (00004458)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 久史 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (60250833)
高橋 正彦 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (80241579)
|
Keywords | (e,2e)分光 / 非弾性散乱 / チオール |
Research Abstract |
標的原子・分子にエネルギー・運動量既知の単色電子線を衝突させ、電離電子および非弾性散乱電子の同期をとってそのエネルギー・運動量を測定すれば衝突前後のエネルギー保存則および運動量保存則から衝突前の標的原子・分子の中の電子の状態毎にその運動量空間での波動関数を決定することができる。これが(e,2e)分光であり、固有エネルギーではなく、物質の性質を決定する波動関数の形そのものを見ることができる殆ど唯一の方法である。 本研究期間中に測定装置の製作を完了し、電子銃の性能(1200V,1μA)、分光器の分解能(1.5eV)、エレクトロニクスのスピード(1nsec)、チェンバーの真空度(10-^7Torr)などのチェックを行い、所期の性能を得ていることを確認した。本装置の特徴は検出器をマルチ(10)チャンネルにしたことにより大幅な測定時間の短縮を図った点にある。 次いで波動関数が正確に知られているHe,Arなどの稀ガスについて測定を行い、解析結果が計算値および既に報告されているものと一致することを確かめた。 更に数種のチオール類について測定を行い、最高被占準位である孤立電子対の分子内への拡がりの程度を調べたところ、トランス-イソプロピルチオールの場合にのみ特異的に拡がることが判明し、その原因について考察を行った。現在フラン、シクロヘキサジエンについて測定を完了し、解析を行いつつあると共に、いくつかの分子について測定を行っている段階である。
|
-
[Publications] 高橋正彦: "マルチチャンネル運動量(e,2e)分光装置の試作" 東北大学科学計測研究所報告. 43. 55-72 (1995)
-
[Publications] M.Takahashi: "Electron Momentum Spectroscopy Study of Lone Pair Orbitals of Thiols and Dimethyl Sulfide" Journal of Physical Dhemistry. 101. 528-532 (1997)