1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07404036
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
海津 洋行 東京工業大学, 理学部, 教授 (20016140)
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Keywords | ルテニウム(II)錯体 / 電荷移動三重項状態 / 無輻射緩和過程 / 溶媒効果 / 同位体効果 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
トリスビピリジンルテニウム(II)およびトリスフェナントロリンルテニウム(II)錯体の発光寿命について、水、アルコールおよびその混合溶媒中で、温度を変えて測定した。発光寿命および発光の量子収量から電荷移動励起三重項状態からの無輻射緩和速度を見積もった。 無輻射緩和速度の温度依存性からビピリジン錯体では、二つの無輻射緩和過程が競争しており、水溶液中では直接基底状態に緩和する過程(項間交差過程)が主で、アルコール中では中心金属原子の(d,d^*)励起状態を経由する過程(金属中心過程)が主であることが分かった。一方フェナントロリン錯体では、水溶液、アルコールおよびその混合溶液中のどの溶媒中においても、金属中心過程が主であることが分かった。金属中心過程を経由する無輻射緩和速度には同位体効果がほとんどあらわれないことが明らかになった。 ビピリジン錯体で明らかになった項間交差過程について詳しく検討を行った。水溶液中に比べアルコール中での無輻射緩和速度が遅いこと。水溶液中では溶媒の同位体効果が顕著であるが、一方、アルコール中では、水酸基のプロトンを重水素に変えても速度は変化しない。これらの実験効果から、我々は無輻射緩和についてこれまで提出されていた、溶媒への電子移動状態を経由するというモデルではなく、ルテニウム(II)錯体の配位子間に抱接された溶媒分子を経由して、励起エネルギーが錯体の近くに存在する溶媒のクラスターに逸散するというモデルを提出した。抱接された水分子は金属錯体の配位子のπ電子系および錯体の近傍に存在する溶媒クラスターの両方に水素結合することが出来るが、アルコールの場合はどちらか一方としか結合することが出来ない。この違いが無輻射緩和速度に影響を与えたとするものである。水酸基を持たないアセトニトリル中での緩和速度はアルコール中と非常に似ており、抱接された分子の関与が明らかである。もちろんこのモデルではアルコール中では同位体効果は期待できない。
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[Publications] T.Ikagawa,T.Otsuka,Y.Kaizu: "On the spin-polarization in the ground state of the Cr(III)ion" Chem.Phys.Lett.248. 255-259 (1996)
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[Publications] M.Maruyama,Y.Kaizu: "Syntheses,absorption spectra,electrochemistry and MLCT excited-state properties of 〔Ru(imin)_n(bpy)_<3-n>〕(PF_6)_2(n=0-3、imin=2(N-methyl formimidoyl)pyridime)" Inorg.Chim.Acta. 247. 155-159 (1996)
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[Publications] N.Ishikawa,Y.Kaizu: "Excited state of the lutetium phthalocyanine trimer:Semiempirical molecular orbital and localized orbital study" J.Phys,Chem.,. 100. 8722-8730 (1996)
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[Publications] N.Ishikawa,Y.Kaizu: "Thermally a ccessible triplet state in a phthalocyanine assembly system which is formed from crown-ether substituted lutbtium phthalocyanine dimer…" Mol.Cryst.Liq.Cryst.,. 286. 263-268 (1996)
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[Publications] T.Otsuka,N.Takahashi,Y.kaizu: "Energy transfer from tris(2,2′-bipyridine)rethenium(II)or tris(2,2′-bipyridine)osmium(II)to hexacyanachromate(III)in a pure crystal of double complex salt." Mol.Crys.Liq.Cryst.,. 286. 269-274 (1996)