1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07405011
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 勇二郎 金沢大学, 工学部, 教授 (30019765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百生 登 富山県立大学, 工学部, 助手 (80239590)
多田 幸生 金沢大学, 工学部, 助教授 (20179708)
滝本 昭 金沢大学, 工学部, 教授 (20019780)
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Keywords | 凍結保存 / 生体細胞 / 生残率 / 凍結損傷の機序 |
Research Abstract |
本研究は,生物体の凍結の機序を,マクロな伝熱過程,細胞レベルでのミクロ挙動,さらには分子レベルでの水の結合状態などの階層的な視点のもとで明らかにするとともに,それらに与えられた系統的な記述を連結することにより,新しい輸送現象論を確立することを目的とする。 前年度までに,単細胞である小麦プロトプラストの凍結・解凍実験とin vitroな浸透圧実験とにより,細胞内外で生ずるミクロ挙動と細胞の生存状態の連関を明らかにした。引き続き本年度は,冷却操作および凍害防御剤の濃度をパラメータにした実験を行い,ミクロ挙動と生存状態の連関をより詳細に追求した。また,新たに,生体組織の凍結過程の数値計算を行い,細胞の生存状態をマクロな伝熱過程と関連づけて検討した。以下に得られた結果を示す。 (1)2段冷却法による凍結実験を行った。具体的には,Glycerolの浸透により凍結耐性を付与した細胞を,まず細胞外凍結の状態で緩速に冷却し,凍結脱水して細胞内濃度を高める。その後,急冷し,核生成を回避しながらガラス化温度まで到達させる。このような2段冷却操作を行うことにより細胞内部が準安定なガラス化状態へ移行することが明らかにされた。 (2)細胞内での氷晶形成は致命的であること,またガラス化の過程での損傷はほとんどないことが示された。 (3)生物組織体を細胞とそれを取り囲む領域(細胞外)からなるセル要素の集合体とし,細胞膜を通した水分移動,細胞の濃縮と変形,細胞内での過冷却状態からの氷晶形成などを組み込んだ凍結モデルが提示された。 (4)組織体の凍結モデルに前年度得られたin vitro実験の結果を組み込むことにより,組織体における細胞の生残率を定量的に推算することが可能となった。計算により,組織寸法が大きくなるにつれて組織体内部の細胞は脱水による損傷を受けやすくなることが示された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Tada: "Heat Transfer and Viability of Cell during Freezing of Biological Tissue" Proceedings of the International Conference on New Frontiers in Biomechanical Engineering. 357-360 (1997)
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[Publications] Y.Hayashi: "Formation of Mushy Region in Freezing of Aqueous Solution" Thermal Science and Engineering. 6・1. 147-151 (1998)
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[Publications] 多田幸生: "生体細胞のガラス化におけるミクロ挙動と損傷" 第35回日本伝熱シンポジウム講演論文集. (発表予定). (1998)