Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安永 智佐 九州大学, 農学部, 助手 (20264103)
伴野 豊 九州大学, 農学部, 助手 (50192711)
河口 豊 九州大学, 農学部, 助教授 (80038306)
大庭 道夫 九州大学, 農学部, 助教授 (80038281)
古賀 克己 九州大学, 農学部, 教授 (40038261)
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Research Abstract |
これまで未確認であった,インドから記載されたBombyx属の昆虫について調査した結果,インドにはクワコBombyx mandarinaは分布していないことが確認された。また,Moore(1872)によりインドから記載された数種のBombyx属昆虫が,いずれもカイコBombyx moriの品種であることも明らかになった。このことは,インドにおいてはカイコに新たに野生昆虫の遺伝子が取り込まれた可能性が極めて低いことを示唆するものと考えられる。中国におけるクワコの分布は南限は江西省,西は四川省,北限は遼寧省となっていて,南方型ではなく北方型であり染色体数はいずれもn=28型であることを再確認した。さらに,Astaurov et al.(1959)の論文に供試されたn=28型クワコが,北朝鮮と国境を接する沿海州Hasan地区の原産で,野生のクワから採取された越冬卵に由来することも明確になった。その結果,韓国及び日本(北海道,対馬,本州,九州)のn=27型クワコと中国のn=28型クワコの分布境界線は,朝鮮半島北部と判断されるに至った。 わが国におけるクワコとヤマグワの分布についても養蚕地帯以外では調査不十分な地域が多く,現在までに確認されているクワコの南限はトカラ諸島の中之島である。ヤマグワの自然分布の南限は九州本島で,屋久島及び種子島にはシマグワが分布しているが,屋久島のクワコはn=27型であることがすでに報告されている。また,本年度の沖縄本島,石垣島,西表島のシマグワからクワコを採集する再度の試みは成功しなかった。クワコの分布北限については,大英博物館に北海道産(Yezo)の標本が所蔵されていたので,北海道産のクワコは札幌を中心とする人為的な分布ではなく,自然分布と判断される。そこで,北海道におけるクワコの自然分布を調査する目的で,晩秋期に北海道大学農学部附属苫小牧演習林内の野生のヤマグワから越冬卵の採取を試みた。その結果,ヤマグワの樹幹等に産卵されたクワコ越冬卵約30を採集することができた。北海道産のクワコ卵は九州産及び韓国産クワコの越冬卵よりやや大型であった。 中国広東省産及びインドバンガロール産のカイコ病原性微胞子虫で,ラテックス凝集法によりN.bombycisと同定された分離株の生物学的性状を,昆虫細胞培養系で比較した。中国産,インド産,および日本産N.bombycisの生活環および増殖様式は共通点が多く,明瞭な差異が見られなかった。
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