Research Abstract |
カイコ及びクワコのアリルフォリン遺伝子の第3,第4エキソンの一部と第3イントロンの全領域を含む塩基配列を決定した。第3,第4エキソンについては,韓国産クワコの第137,154,155番の3塩基が置換していたが,クワコでは全く共通していた。アミノ酸配列を推定すると,韓国産の137番塩基の置換はアミノ酸配列に影響を与えず,151,155番では他がチロシンであったのに対し,イソロイシンに置換していた。また,イントロン3では福岡産,対馬産,韓国産には,中国産クワコおよびカイコには存在しない66塩基の挿入配列が認められた。イントロン3の挿入配列の有無から,a)中国産クワコ及びカイコ,b)福岡,対馬及び韓国産クワコのグループに類別された。 アイソザイム分析の結果からは,福岡産に対して,中国産,韓国産クワコが類似しており,対馬産クワコは両者の中間であった。一方,染色体数と挿入配列が異なる中国産クワコと韓国産クワコに,アイソザイムパターンの共通性がみられた。 以上,本研究は,カイコおよびクワコの諸形質にみられる変異の連続性について,種レベル,細胞レベル,分子レベルおよび宿主-奇性者関係から検討し,クワコをカイコの祖先型昆虫として特定可能かどうかの問題解決に寄与することを目的として行われた。その結果,クワコはカイコの唯一の祖先型昆虫種であり,イヌ,ネコ等のように複数の祖先型動物種から成立したものではないことがより明確になった。加えて,中国産クワコが日本産および韓国産より飼育しやすいことが判明した。中国本土産クワコおよびカイコすなわちn=28型のものと,日本および韓国産クワコすなわちn=27のものとの間の関係については,アリルフォリン遺伝子の挿入配列の存否から類推すると,n=28型からn=27型が生じたものと結論される。
|