1997 Fiscal Year Annual Research Report
諏訪湖の結氷・御神渡記録と湖底堆積物による歴史時代の気候復元
Project/Area Number |
07408001
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Research Institution | TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三上 岳彦 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (10114662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 真紀子 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助教授 (10175119)
福沢 仁之 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (80208933)
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Keywords | 諏訪湖 / 気候変動 / 湖底堆積物 / お神渡り |
Research Abstract |
1996年夏に,浚渫の行われていない諏訪湖北部および中心部で,空気圧入式ピストンコアラーを用いて,全長約2m(過去約800年間)の湖底柱状堆積物を採取した。堆積物は,2.5cm間隔に分割し,色調,帯磁率,比重,孔隙率,鉱物組成,および炭素,窒素,硫黄量を分析した。その結果,特に有機炭素量が気候変動の有効な指標となりうることが明らかになったので,諏訪湖の結氷・御神渡り記録との関係を検討・考察した。 結氷・御神渡り記録から冬季の気温を復元・推定する試みを行った。具体的には、「諏訪測候所50年誌」(1995年3月刊行)に収録されている諏訪湖の結氷・御神渡り・解氷表の全面結氷日を用いて、諏訪測候所の冬季気温との相関を求めたところ、1945〜1990年における12月・1月両月の平均気温と全面結氷日との間にr=0.80の高い相関が認められた。 そこで、諏訪大社の諏訪湖結氷期日データから、直線回帰式にもとづいて冬季(12月・1月)の平均気温を求めた。推定された過去500年間の冬季気温変動には、いくつかの特徴が読みとれる。1898年以降については、1940年代の低温と近年の温暖化傾向が顕著であるが、100年間を通した長期傾向は認められない。1750年代から1860年代にかけては、欠測や無結氷で値が連続していないが、約1℃の気温上昇が読みとれる。18世紀後半から19世紀前半にかけては、夏季の低温による飢饉が頻出した年代であり、冬季の平均気温も現在に比べて低かったと考えられる。また、Lamb(1977)によれば、小氷期の終了は1850年頃とされており、諏訪における1800年代前半の冬季気温の上昇傾向とも対応している。過去550年間で最も寒冷であったのは、1600年代初頭で、現在よりも1.5℃程度低かったと推定される。1480年代、1540年代は比較的温暖で、20世紀の平均値に近かったと推定される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 三上岳彦 ほか2名: "北半球の冬季(DJF)気温・海面気圧場にみられる数10年変動" 海洋. 29-11. 689-693 (1997)
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[Publications] 三上岳彦・石黒直子: "諏訪湖結氷記録からみた過去550年間の気候変動" 気象研究ノート. (印刷中). (1998)
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[Publications] 福沢 仁之: "湖沼堆積物による古環境情報の高精度復元" 環境情報科学. 26-2. 42-53 (1997)
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[Publications] 池田まゆみ・福沢仁之 ほか2名: "湖沼年縞堆積物によるグローバルな気候・海水準変動の検出" 気象研究ノート. (印刷中). (1998)
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[Publications] 渡辺真紀子: "黒ボク土と古代生業" 環境情報科学. 26-2. 36-41 (1997)