1995 Fiscal Year Annual Research Report
高生物活性エンジイン化合物の発現制御機構と新規分子設計
Project/Area Number |
07408033
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 幸雄 京都大学, 化学研究所, 教授 (40025698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 雅巳 京都大学, 化学研究所, 助教授 (40126008)
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Keywords | エンジイン / ダイナミシン / エスペラミシン / DNA切断 / DNA認識 / 抗癌活性 / 作用発現機構 / 分子設計 |
Research Abstract |
エンジイン型抗癌抗生物質は、新奇な化学構造を備え、抜群の抗癌活性を示すことから、世界中で意欲的に研究が進められている。エンジイン環を含み環構造を特徴とする抗癌抗生物質ダイナミシンAに関して、標的DNAとの相互作用を追究し、本薬物が示す独特な作用発現を分子レベルで理解することを意図した。ダイナミシンAは、アドリアマイシン等のアンスラサイクリン系抗生物質の部分構造であるアンスラキノン環とエンジイン10員環とを合わせもったハイブリッド型分子であることが最大の特徴である。本薬物は、アンスラキノン環を介してDNA塩基対間にインターカレートし、DNA鎖切断を引き起こす。特筆すべきは、他のエンジイン系薬物と比べてDNAの局所的な高次構造を鋭敏に認識する能力をもつ点で、癌細胞に多いDNA構造を認識することによって、選択毒性を発揮している可能性が示唆される。癌細胞を殺傷する原因の最も重要な点は、その遺伝子の本体であるDNAの両鎖を切断する能力である。そこで、分子生物学的ならびに物理化学的手法を駆使して、ダイナミシンAが示すDNA両鎖切断様式を検討した。その結果、ダイナミシンAによる切断は(1)ギャップ反対鎖の一塩基3'側のヌキレオチドに起こり、(2)特に5'-pu pu/3'pypupyの配列に強い切断が見られ、(3)切断不活性なダイナミシンHによりほとんど阻害されないことが判明した。以上により、癌細胞に致命傷を与えるDNA両鎖切断は、2分子のダイナミシンAによる配列依存的な2段階反応を経て進行することが立証された。
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