1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07451021
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
苧阪 直行 京都大学, 文学研究科, 教授 (20113136)
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Keywords | 読み / 眼球運動 / サッケード |
Research Abstract |
日本語テキストの読みの過程をサッケードと停留時間を指標として実験心理学的に検討した.我々はテキストを読むとき眼球を巧みに制御しながらテキストの言語的意味を読み取っている.読みにおける眼球の運動には2つの位相すなわちサッケードと停留があることが実験的に確かめられている.サッケード運動は急速な加速と停止からなる眼球の特異な運動である.また、サッケードは眼球が次の停留位置をどこに決定するかという問題ともかかわっている.テキストの読みの過程で何がサッケードの大きさを制御しているのか、制御は意図的(意識的)に計算されるのか、無意図的(無意識的あるいは自動的)に決定されるのか、あるいはテキスト構造に依存して変化するのか、などの問題を検討するのが本研究の目的である.さまざまなテキスト構造をもつ短文を読んだときのサッケードの変化を検討した.得られた結果は以下の通りである. (1)サッケード運動の移動距離がテキストの言語情報により決定されるのではないかという仮定を検討した結果、停留やサッケードの大きさの統計的な分布から推定して、停留時間は言語情報の意味的処理を反映しやすいがサッケードは必ずしもそうでないことが判明した.また、英語と日本語の比較、さらに漢字仮名混じり文と仮名文の処理の違いがサッケードにも反映されることが明らかにされた. (2)表記形態とサッケード制御の問題を検討した結果、表記形態(縦書きや横書き)によってサッケードが著しく異なるという傾向は認められなかった. (3)最適停留位置効果(OVP効果)とサッケード制御の問題が吟味され、英語やフランス語と同様に日本語にもいろいろな語長で単独提示された単語内部に最適停留位置効果が認められることが判明した.これは眼球が半ば自動的に最も効率的な視覚処理が可能な最適停留位置を計算していることを示唆しているものと思われる.本研究によって、テキストの読みにさまざまなレベルでサッケード制御が影響をもつことが実験的に確認された.
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