Research Abstract |
本研究は,ストレス-コーピング-病気罹患性モデル(Steptoe, 1991)を理論的枠組みとして,ストレスと健康-病気との間に介在する心理社会生物学的メカニズムを実験的及びフィールド研究から実証的に解明することを目的とする.今年度は,フィールド研究において(大学生と様々な職種の成人; N=500各々),ストレスと健康関連行動を測定する質問紙の収集と作成(信頼性の検討)を行うとともに,実験的研究において,メンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応性を測定するための予備実験を行った. 1.質問紙の収集と作成 (1)ストレッサー尺度(津田ほか,1994):家庭問題(4項目;信頼性係数α=0.74),生活環境(4項目α=0.69),人間関係(2項目α=0.79). (2)パーソナリティーの測定:日本版アイゼンク性格検査(岸本,1988);ユーモア質問紙(高下,1995):ユーモアのセンス(8項目α=0.86),ユーモアに対する態度(6項目α=0.64). (3)ストレス反応尺度(津田ほか,1994):情動反応(9項目α=0.91),身体反応(6項目α=0.83),認知・行動反応(6項目α=0.87). (4)健康関連行動の測定:ライフスタイル尺度(津田ほか,1994):時間的余裕(6項目α=0.82),話し方(3項目α=0.73),嗜好(5項目α=0.62);健康意識尺度:病気の脅威(5項目α=0.74),自己管理(4項目α=0.70),病気の経験(6項目α=0.67). 2.メンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応性の予備実験 (1)心臓血管系反応性の測定(Tsuda et al., in press):フィナプレス法(オメダ2300)によって,メンタルストレス・テスト(9分間の暗算課題)の負荷によって最高血圧(平均増加率23.3%)と最低血圧(平均増加率26.5%),脈拍数(平均増加率15.3%)がいずれも有意に上昇した. (2)唾液免疫グロブリン(Ig) A抗体の測定:唾液中に分泌される免疫物質IgAの抗体産出量をネフェロメトリー法によって測定することで,メンタルストレス・テストによって,IgA抗体産出量が一般に増加すること(平均増加率32.3%),ただし個人差が大きいことなどが分かった. (3)主観的覚醒の測定(倉崎ほか,1995):メンタルストレス・テスト負荷によって,緊張覚醒とエネルギー覚醒は有意に変化しなかった.しかしながら,ストレス負荷前には,緊張覚醒とエネルギー覚醒との間には負の相関関係(r=0.49)が認められたが,ストレス負荷後にはこれらの関係性が有意に低下した.
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