1996 Fiscal Year Annual Research Report
遊戯性のメタコミュニケーションの発達過程の検討 親子の戯れ合いにおける他者の心情の読みとりと親子関係の考察より
Project/Area Number |
07451038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Fuji Women’s Junior College |
Principal Investigator |
中野 茂 藤女子短期大学, 保育科, 教授 (90183516)
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Keywords | 共感性 / intersubjectivity / playful teasing / 戯れ合い / 乳児 / 心情理解 / メタコミュニケーション / 親しさ |
Research Abstract |
本プロジェクトは「ビデオ育児日記」と称し、親自身に子どもの日常でのやりとりをビデオ録画してもらうという方法をとっている。今年度は昨年度に続き、1歳代になった子どもたちとその家族20世帯に継続して協力を得、12、15、18か月時点での家庭内での父母・同胞と対象児との自然なやりとりを観察した。同時に、昨年度収集した6〜12か月までの資料の分析をした。本プロジェクトの目的は、親しい関係での共感性(intersubjectivity)の成り立ちを探ることである。具体的には、対象児とその家族との戯れ合い、葛藤(子どもの不従順、親の誤解)場面での意図の共有に至る過程、葛藤の解消過程を明らかにすることである。今年度の成果として上げられる点は以下である。第一に、本プロジェクトに参加した父母の全員から対象児と戯れ合う場面の資料が得られた点である。とりわけ、親が子どもをじらす、突然の行為で驚かす、子どもの期待をはぐらかすなどのふざけっこ・からかい(playful teasing)を用いたやりとりは、0歳後半から今年度観察した1歳半までのどの年齢段階でも認められた。しかも子どもたちもこのgameを楽しむ傾向にある。つまり、子どもたちは、親に突然驚かされたり、要求をじらされたり、期待をはぐらかされたりされているにもかかわらず、そのような親の働きかけを楽しんでいたといえる。このことから、対象とした乳児は親の遊戯の意図を理解できることが示唆される。第二に、葛藤場面は1歳代ではしばしは観察された。その資料からは、それが子どもの不従順、または、親が子どもの意図を誤解したことに始まったにせよ、葛藤の表出後、突然、どちらかが愛想笑いを示す、話題を変える、おどけるなどの和解への働きかけをすること、そのことで最終的には楽しさの共有へ至ることが見いだされた。以上の成果から、親しさの基底には共感性維持のメカニズムがあることが示唆された。
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Research Products
(2 results)