Research Abstract |
われわれの研究グループは大阪経済大学の中小企業・経営研究所内に組織されたサブ・研究グループであり,文部省より頂いた科学研究費補助金に加えて,同研究所からも補助を得て研究を行ってきた。共通のテーマは,日本の企業・政府が中国の社会経済の発展にどのように関わることができるかであるが,われわれの研究では特に,金融制度,社会保障制度,労働市場整備,環境保護等の分野を視野の中心においている。 研究主査の山本恒人は,中国の社会保障体系とその改革の研究(『ポスト〓小平体制の中国』日本貿易振興会),および重慶市でのリサーチをふまえた中国の社会保障に関する実証研究(『経済情報学研究』姫路独協大学,No.9)を行い,中国制度の問題点の指摘・改革の方向についての提言を行った。(日中経済協会編『党大会と社会主義市場経済の新展開』)。現在重点的に行っているのは労働市場の成熟過程,およびそれとの日本企業の関連についての実証分析(日中経済協会編『中国の対外開放政策の変動と外資系企業』)である。また,1996・1997年には上記研究所より補助を受けて,研究グループの他のメンバーと中国国有企業改革についての現状視察を行った(『経営経済』中小企業経営研究所,第32号,第33号)。 二宮正司と藤川清史は共同で作業を進め,中国を中心とする統計資料を,研究グループ内のみならず広く一般の利用を意識した,データベースの整備に努めた。分析の方向は,産業連関表を素材にした産業別(静学的)分析と,マクロ経済統計を素材にした動学的分析の接合である。前者として,産業連関モデルの開発(生産構造分析の文献:『大阪経大論集』第47巻6号,『経営経済』第31号・第32号,価格構造分析の文献:『ERINAレポート』,環日本海経済研究所,第21号),後者として,産業別環境汚染物質排出量計測モデルの開発および中国への適用(『経済分析』,経済企画庁,第154号)を行った。中国の産業構造は環境負荷が大きく,経済発展と共にその負荷は大きくなっている。日本からの環境技術移転はそうした負荷の軽減に非常に有効であることがわかった。目下,アジア地域での計算可能均衡モデル(CGEモデル)構造についての暫定稿を作成中である。 伊藤武は,中国に進出した日系企業の中国の経済発展に果たしてきた役割および中国の経済成長とインフレーションとの関連と中国の金融制度改革とマクロ・コントロールについての分析をおこなってきた。前者については,1995年の中国天津市における実態調査の結果を踏まえた報告を行った(『経営経済』第32号)。後者については,インフレの原因とマクロコントロールの重要性に環しての啓蒙的活動(『財経論壇』(中国・東北財経大学経済研究所),1996-6),および実証的な研究を報告した(『経営経済』,第33号)
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