1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07454057
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Research Institution | National Laboratory for High Energy Physics |
Principal Investigator |
久野 良孝 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (30170020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 貴志 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (80212091)
尾崎 均 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (10177214)
岡田 安弘 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (20212334)
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Keywords | B中間子崩壊 / 時間反転対称性の破れ / タウ粒子 / ニュートリノ / シリコン・ストリップ測定器 / D中間子 / 事象構成 / スピン偏極 |
Research Abstract |
B中間子における時間反転対称性の破れを探索する可能性について検討した。B中間子のセミレプトニック崩壊(特にタウ粒子を伴うタウオニック崩壊)では、D中間子とレプトンとそれに対応するニュートリノが現われる。時間反転対称性を調べるためには、この終状態の粒子の運動量ベクトルから成る崩壊平面に垂直な方向にレプトンのスピン偏極があるかどうかを調べる。もしこのスピン偏極がゼロでないとすると、時間反転対称不変性が破れていることになる。K中間子においても同様な実験が試みられているが、B中間子で行う利点は、B中間子やタウ粒子が重いことである。これは、このような時間反転対称性の破れの原因となる荷電ヒッグス粒子が、それが相互作用するフェルミオンの質量に比例するからである。すなわち、B中間子のタウオニック崩壊を観測するとK中間子の場合と比較して、約100倍効果が大きいことになる。B中間子のタウオニック崩壊の問題点は、タウ粒子の崩壊からニュートリノが生成されるので、タウ粒子の進行方向が分からないことによる。解決方法は大きく分けて2つある。1つは、タウ粒子の崩壊をハードウェア的にシリコンストリップ測定器を使って測定することである。測定精度として100マイクロン程度が必要であり、測定器自身での多重散乱などが問題となる。現在、標準で使われているシリコンストリップ測定器は300マイクロン厚さであるが、100マイクロン厚さを製作して、その性能をテストするところである。第2としては、ソフトウェア的に解決することであり、この場合B中間子は対生成されるので、関心のあるB中間子でない方のB中間子を事象構成して、関心のあるB中間子の運動量と進行方向を確定して実験的な制限を与えるものである。どちらの方法も非常に期待できる。電子陽電子B中間子工場での実験で最終的に期待される実験精度は、数%程度の精度である。
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