1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07454096
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
津田 直子 奈良女子大学, 理学部・物理科学科, 教授 (40031679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 英巳 奈良女子大学, 理学部・物理科学科, 助教授 (90169194)
坂本 直樹 奈良女子大学, 理学部・物理科学科, 教授 (20031718)
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Keywords | 元素分析 / PIXE法 / 産地分類 / 石器及び土器 |
Research Abstract |
本研究の最終年度となった今年度はイオンビームの大気中への取り出しシステムも既に完成し、現時点における最高のエネルギー分解能を持ったX線検出器も設置することが出来たので、考古学関連の試料を用いた分析作業に重点をおいた研究を行った。X線のエネルギースペクトルの解析については、多くの人達が個々に種々の解析プログラムを利用しているが我々はパーソナルコンピュータを用いて手軽に解析が行えるピークフィッティングプログラムの開発を行った。元素分析を行った考古試料は入手が可能であった土壌を中心としたものである。年代的には奈良時代のもので平城京の建設に関係したものが大部分を占めており、一部貝塚出土の糞石(大きさや太さから犬の糞と推定されている)の分析も行った。話題性のある試料としては、毛利氏ゆかりの吉川元春邸の廁跡の土壌を入手し、分析を行ったことが上げられる。土壌から検出される一般的な元素はSi,S,K,Ca,Ti,Mn,Fe,Cu,Zn,Rb,Sr,Y,Zr等であるが、廁跡の土壌の特徴としては燐や硫黄が多量に検出されたことである。糞石からは燐が大量に検出されたが、硫黄はほとんど検出されなかった。また、KやFeが非常に少なくCaが多かったことも特徴として上げられる。我々の少ない経験からも、この糞石に見られたX線のエネルギースペクトルは特異的なものであると言える。平城京基壇跡の土壌に関するものとして、東西南北の壁に使われていた土及びその表土、地山及び基壇基塩内に使用されていた土壊等合計22サンプルの元素分析を行った。検出された元素は土壌に見られる典型的なものであったが、地山の土からは多量のZrが検出されたこと,硫黄が検出される場所や検出されない場所があること,鉄分の多い土壌と比較的少ない土壌が存在していること等が分かった。また、Mnのようにサンプルを採取した位置によって含有量のばらつきが大きな元素も存在することから指標元素の選択には注意を要することが分かった。
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