Research Abstract |
本年度の野外調査において,新たに福連木層(牛深市,中部始新統),杵島層(佐賀北方町,上部始新統),上部蝦夷層群(浦河町,白亜系)から珪化貝化石を発見した.いずれの場合も初生的殻体構造の残存が認められることから,シリカによる交代作用であることが確認された.これらは既に珪化が確認されている芦屋層群(北九州市及び下関市,漸新統),訓縫層(長万部町,中部中新統)と層準が異なり,炭酸塩化石の珪化は様々な地質時代と地域を通じて普遍的に生じていることを示している.多くの場合,珪化はアラレ石の方解石化以前の埋没早期に行われているが,福連木層の一部では方解石化後にも生じており,重複した交代作用が認められた.また,福連木層では緑泥石様珪酸塩鉱物による交代現象や菱鉄鉱の充填(?)など多様な続成変質がみられた.なお,炭酸塩化石の続成変質に関連して母岩のセメント質を検討した.未変質,方解石化,交代作用により殻体が保存される場合,セメントが炭酸塩質であり,一方,殻体が溶解してキャスト状になっている場合はセメントが炭酸塩質,珪酸塩質,未形成など多様であることが判明した. 上記の各試料について薄片観察を行った他,一部試料のルミノスコープによるカソードルミネッサンス(CL)像観察,X線回折による鉱物同定,EDS,WDSによる微小部元素分析などを行った.とくに杵島層試料のEDS分析の結果,埋没深度の増大に伴って化石殻体内に炭酸塩セメント中の微量元素(Mn,Fe,Mg)が侵入し,化石とセメントの同化が行われることが明らかになった.また,CL像観察は予察段階であるが,薄片観察では識別し難い化石とセメントの境界が極めて明瞭であることが判明し,微小部元素分析の補助手段としての効力が期待できる.
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