1995 Fiscal Year Annual Research Report
分子及び量的遺伝学の手法による社会性ダニ類の繁殖構造解析と血縁選択理論の実証
Project/Area Number |
07454209
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 裕 北海道大学, 農学部, 助教授 (20142698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐原 健 北海道大学, 農学部, 助手 (30241368)
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Keywords | DNA / PCR法 / 血縁選択 / 血縁度 / 攻撃性 / 亜社会性 / 量的形質 / 近親交配 |
Research Abstract |
研究計画に従って、まず日本海沿岸地域において、標高が10-50mで気象庁アメダス定点観測地点の近傍を選んでススキスゴモリハダニの採集調査を実施した。青森から山口までの間で13地点においてサンプルを得、それらを飼育および液浸標本として持ち帰り、前者は本研究費で新たに新設した恒温飼育室において継代飼育しており、また後者は現在プレパラート標本を作成中である。 前記の継代飼育系統をもちいて、雌1個体からDNAがPCR法によって増幅可能かどうかを検討し、試行錯誤の結果1匹でも処理次第では変異性を持つDNA断片の増幅ができることが判明した。ただし、現段階ではそれらの断片が真にダニ自体の安定領域の断片か否かの判断が困難である。そこで、幾つかの地域系統を選んで、強度の近親交配によって系統の遺伝的均一化(純系化)を実施している。5-10世代の近親交配の結果、特定の血統に特異的DNA断片が得られることが判明すれば、それらを用いてまもなく相互作用個体間血縁度の測定にとりかかれるだろう。 一方、前記の近親交配実験は、同時にこの種のハダニにおける野外での近親交配の程度を近交弱勢の発生度合から間接的に測る目的を併せもっている。現在継続中の実験から、母子交配によって得られた第2世代雌には部分的に強い近効弱勢とみられる結果が得られはじめている。 採集飼育個体群を用いた雄の攻撃性変異の行動学的検討は、現在13個体群の実験の約半分について実験を完了し、残る個体群についても現在実験を継続中である。これまでの実験から、雄の攻撃性の変異は、Saito(1995)で報じた傾向とおおむね一致していた。この中間報告を1995年度の日本動物行動学会で口頭発表した。 さらに、野外採集標本を用いて量的形質の変異が交尾集団の構造によって変化するかどうかについてプレパラ-標本を作成し、それを顕微鏡に接続したコンピュタ-による画像解析装置によって解析している。量的形質の近親交配によるゆらぎ、あるいは中立的形質の遺伝分散の増大等について今後検討を加えることになる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 齋藤裕(編著): "親子関係の進化生態学-節足動物の多様な社会-" 北海道大学図書刊行会(印刷中), (1996)
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[Publications] YutakaSaito: "The Evolution of Social Behaviour in Insects and Mites(Crespi & Choeeds)" Cambridge University Press(in press), (1996)