1995 Fiscal Year Annual Research Report
近世城下町を基盤とする地方都市における明治・大正期の官庁街の建設と都市改造
Project/Area Number |
07455247
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 滋 早稲田大学, 理工学部, 教授 (60139516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 義英 早稲田大学, 理工学部, 教授 (70139517)
後藤 春彦 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (70170462)
中川 武 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30063770)
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Keywords | 城下町 / 都市形態 / 官庁街 / 都心 / 近代化 / 地方都市 / 都市改造 / 三島通庸 |
Research Abstract |
近世城下町を基盤とする地方都市における明治・大正期の官庁街の建設と都市改造を研究するに当たり、まずその基礎である近世城下町の都市構造を類型化する作業を本年度の中心テーマとして行った。明治・大正期の官庁街建設は、近世城下町の都心部の都市構造との関係、当時の社会的な要因、そしてその都市の全国土的な立地条件によって決定されている。中でも近世城下町の中心部の基盤条件が官庁街の建設には決定的な条件となっており、この類型化を分析の基礎として行った。その結果、街区型、臨水型、背山臨水型、馬の背型という四つの主類型を行い、その中で街路形態がどのように構成されているかにより細分類を行っている。 次に城郭を中心とする城下町の都心部に、県庁を中心とする官庁がどのように立地されたかを類型化した。城郭を中心に官庁が立地した福島、富山、前橋、大分。大手道を軸に官庁が形成された静岡、佐賀、盛岡、福井。大手道の周辺に官庁が立地した鳥取、和歌山、徳島。旧町家域には官庁街が形成された金沢、秋田、高知、松江。街道を挟み込んで官庁街が立地した宇都宮、高松、津、などの類型があることが明らかになった。このほかに城下域の外に城下域と隣接して官庁街が建設されたのが山形、熊本。城下域に分散して官庁街が建設されたのが松山、岡山、などである。 このように明治・大正期の官庁街は当時の近代都市建設の意図を体現して多様な立地パターンが形成されたことが明らかになっている。さらに、山形、金沢、福井、甲府の四都市において詳細な分析を行い、官庁街の建設がそれぞれの都市の近代都市建設の方向性を決定づけたことを明らかにした。 山形では三島通庸の城下町改造が基礎になり、その後の城下町の近代化が進められているし、金沢ではこの複雑な都市構造の中に官庁街が分散的に配置され、城郭を中心とした都市構造は、旧来のまま保存されながら近代都市建設を進めている。福井では震災・戦災などの復興事業の中で城郭を官庁街建設に積極的に利用し、ここを中心にグリット型の都市構造を展開していった。甲府は城郭の内部に鉄道駅を建設するという極めて珍しい改造型の近代都市建設を進めた都市であるが、これも初期に鉄道駅の建設とともに計画的に城郭跡に官庁街を建設し、これをもとに都市改造を進めて行ったことが明らかになった。 このようにこの研究の基礎としての城下町の骨格の類型化とその上にどのようなパターンで官庁街が建設されたかを類型化し、これらの三者の事例研究による近代化のシナリオの分析を本年度は行ったが、今後はこの三つの関係を明らかにすることが二年以降の研究課題として残っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 佐藤 滋: "小城下町都市における環境構成に関する研究" 平成7年度大会(北海道)学術講演梗概集. 711-712 (1995)
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[Publications] 佐藤 滋: "城下町の近代都市づくり" 鹿島出版会, 224 (1995)