1995 Fiscal Year Annual Research Report
キトサン金属塩系木材防腐剤による高耐朽性発現のメカニズム
Project/Area Number |
07456081
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
古川 郁夫 鳥取大学, 農学部, 教授 (50032313)
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Keywords | 木材防腐剤 / キトサン金属塩系薬剤 / スギ / 薬剤分布 / 固着性 / 境界表面処理 / 放射組織 |
Research Abstract |
平成7年度は、申請者らが木材用防腐剤として新しく開発したキトサン金属塩系薬剤(キトエ-ス:CCS)で処理したスギ試験片中における薬剤成分の存在様式と固着状況について、SEM-WDXAを用いて調べた。その結果、当初の予想に反して、小試験片であったにもかかわらず、薬剤成分(銅元素)は組織中で局在していた。すなわち、仮道管では、試験片表面に露出している内腔の表面には銅元素が高濃度に存在していたが、試験片中央部の仮道管内腔には存在しなかった。一方、軸方向柔細胞(樹脂細胞)や放射柔細胞の内腔には、試験片中央部に至るまで、銅元素がよく浸透していた。しかし細胞壁中での濃度は内腔表面より低く、壁中への浸透は悪かった。固着状況については、薬剤処理(金属含有量にして0.4〜1.6kg/m^3)した後、所定の耐候操作をしても、銅元素の存在様式およびその濃度(線分析によるピーク高さ)に変化がなかったことから、銅元素は細胞内腔表面にかなり強固に固着していることが分かった。また、薬剤処理濃度が変わると組織中での銅元素の分布にも違いが現われた。すなわち1.6kg/m^3含有処理では、表面に露出していた仮道管内腔と全ての放射組織中に銅元素は高濃度に存在していた。1.0kg/m^3含有処理では、一部の放射柔細胞中に薬剤浸透の悪いところがあったが、ほとんど1.6kg/m^3含有処理と同じであった。1.0kg/m^3以下の処理では、組織中の銅元素濃度にかなりムラがあった。CCSのこのような存在様式や固着状況と、すでに確かめられている防腐性能との関連性を考えると、CCSによる処理は、従来の防腐薬剤のように木材細胞壁中に浸透して効力を発現するのではなく、露出している細胞内腔表面とか柔細胞内腔表面に選択的に固着して、菌糸からの攻撃を外界との境界表面で防ぐことによって効力を発現してると考えられる。この点について、引き続き、詳細に調査中である。
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[Publications] 小林智紀・古川郁夫: "キトサン金属塩の最適生成条件と木材への固着性" 防菌防黴学会誌. 23. 263-269 (1995)
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[Publications] 小林智紀・古川郁夫: "キトサン金属塩の木材防腐効力" 防菌防黴学会誌. 23. 343-348 (1995)
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[Publications] 小林智紀・河内葉子・古川郁夫: "キトサン金属塩の防蟻性能" 木材保存協会誌. 21. 171-177 (1995)
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[Publications] 小林智紀・河内葉子・古川郁夫: "キトサン金属塩の木材注入性" 防菌防黴学会誌. 23. 741-744 (1995)