魚類体表の感染防禦機構と生体内の防禦機構の相互連関

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07456087
• Research Category: Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 鈴木 譲 東京大学, 農学部, 助教授 (40107412)
• Keywords: ウナギ / 皮膚 / 生体防御機構 / 免疫 / レクチン / 好中球 / 食細胞

Research Abstract

体表の防禦機構を突破したことが,体内の防禦機構発現にどのような意味をもつのかを探る端緒として,体表のレクチンに注目し,その精製を進め,白血球の貧食作用に及ぼす影響について検討した.
材料としてウナギを用い,レクチン活性はウサギ赤血球凝集活性で測定した.精製手法として当初考えていたのはレクチンがSuperoseカラムにアフィニティーを示すことを応用することであったが,この方法では集率が悪く,また活性の大幅な低下も認められることから適当でないことが明らかとなった.レクチンが反応しないカラムの素材を検討したところ,Sepharoseが優れていることが明らかかとなった.また,粘液はその主成分である酸性粘液多糖類が精製の障害となるため,これをできるだけ取り除き,上皮細胞をかき取り精製の出発点とした.これを生理塩類液中でミンスして,45%飽和硫酸アンモニウムで粗抽出液とした.さらにSepharoseカラムを用い,FPLCで2回のゲル濾過を行なうとほぼ純枠なレクチンが得られることが明らかとなった.すでに所有しているレクチンに対する抗体は,この精製レクチンに対して極めて鋭敏に反応することから,実用上充分な感度と精度をもっていることが明らかとなった.
PercoIIで分離したウサギ血中好中球と,ウナギ赤血球を精製レクチンと反応させたものとを,非働化したウサギ血清存在下で培養し,貧食活性を検討したところレクチン処理した赤血球に対する貧食率は,非処理赤血球に対する貧食率を上回り,レクチンにオプソニン作用があることが明らかとなった.このことは,体表レクチンが体内の生体防御機構に対して補助的な働きがあることを示しており,体表の防御機構と体内の防御機構とが相互に作用を持つという本研究の前提たる仮説の一端が証明された.