1996 Fiscal Year Annual Research Report
フグとイモリにおけるテトロドトキシンの起源と毒化機構
Project/Area Number |
07456091
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Research Institution | School of Fisheries Sciences, Kitasato University |
Principal Investigator |
山森 邦夫 北里大学, 水産学部, 教授 (80012029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松居 隆 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (90011981)
河原 栄二郎 北里大学, 水産学部, 講師 (80186121)
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Keywords | テトロドドキシン / サキシトキシン / フグ / TTX結合物質 / STX結合活性 / 解毒 / ニホンイモリ / 標高 |
Research Abstract |
フグ科魚類の血漿中にはテトロドトキシン(TTX)と結合する高分子物質(TTX結合物質)が含まれ,血漿中のTTXの多くはこの物質と結合した状態で存在した。さらに本物質はTTXのみでなくサキシトキシン(STX)とも結合すること,フグ血漿中には微量のSTXが本物質と結合した状態で存在することが分かった。調べたフグ科魚類の血漿の全てにTTX結合活性が認められた。中でもコモンフグの血漿の活性が最も高く,その血漿は1ml当たり23MUのTTXと結合した。TTX結合物質は可逆的に酸性ではTTXと解離し,中性では結合した。TTX結合物質はTTXよりもむしろSTXに親和性が高いが,ゴニオトキシン群(GTXs)とはほとんど結合しなかった。TTX結合物質はTTXやSTXに対して解毒効果を示した。TTX結合物質は生体内においてもTTXやSTXと結合性を保ち,その状態ではTTXやSTXの毒性は減少するものと推察された。 ニホンイモリ(イモリ)はTTXを体内に保有しており,その毒性には著しい個体差が存在した。さらに岩手県内の限られた範囲においても採集地によってその毒性に差があり,しかも採集地の標高と毒性との間に正の相関がみられ,環境と毒性との密接な関係が示唆された。そこでイモリの毒性に及ぼす環境の影響を明らかにする目的で,例年は80%程度の個体が無毒であり,有毒個体の平均毒性も低いイモリの生息する標高2〜46mの水田から64個体のイモリを採集し,これを毒性の高いイモリの生息する標高650mの沼に6月に移植・放流した。約100日後に沼から6個体の再捕に成功し,その毒性を調べたところ,6個体全部が有毒であり,その毒性平均値は沼のイモリの毒性平均値近くまで増加していた。以上から,毒性の高いイモリの生息する環境の何らかが原因となってイモリの有毒化および高毒性化を起こすものと推察した。
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