1997 Fiscal Year Annual Research Report
キュウリの高温抵抗性の品種間差異の生理・生化学的機構に関する研究
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07456160
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Research Institution | MIE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
橘 昌司 三重大学, 生物資源学部, 教授 (70024560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名田 和義 三重大学, 生物資源学部, 助手 (40293807)
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Keywords | キュウリ / 高温耐性 / 光化学反応 / 光合成 / 緑化 |
Research Abstract |
1.光合成器官の高温障害:葉の準高温処理(気温38/38°Cに4日間遭遇;以下,高温馴化とする)やABA処理によって,高温による光合成阻害やFv/Fmの低下が顕著に軽減された.膜脂質の脂肪酸不飽和度は高温馴化によって顕著に低下したが,ABA処理の影響は受けなかった.高温馴化処理によって葉の可溶性タンパクの熱安定性(高温による変性沈殿)は低下したが,光化学系の高温耐性(単離葉緑体膜のPSI,PSII,PSI+IIの電子伝達活性)は高温馴化およびABA処理によって顕著に増大した.ABA処理の場合は特にPSIIの高温耐性が高まった.以上の結果,光合成器官の高温馴化機構には葉緑体膜の物理的特性の変化(流動性の低下)が関与しており,ABA処理による光化学系の高温耐性増大はそれとは別の機構によっていることが示唆される. 2.黄化子葉の緑化過程における高温障害の回復現象:キュウリ黄化子葉を光照射前に43°C以上の高温に20分間遭遇させると緑化が顕著に抑制されたが,光照射前に暗黒下に数時間(4〜12時間,処理温度により異なる)置くと光照射後のクロロフィル合成がほぼ正常に復帰し,緑化過程の高温障害は比較的短時間に修復されることが明らかになった.その後の研究で,高温障害後直ちに光照射しても,長時間経過すると正常に緑化することが明らかになった.しかし,48°Cでは,高温処理後暗黒に16時間放置したのちに光照射すると正常に緑化したが,照明下に置くと36時間放置しても緑化しなかった.これらの現象の生理的機作について,フィトクロムやクロロフィル合成系の酵素活性の面からの解明を急いでいる. 3.根の高温耐性:高温遭遇後の生長速度(再生長テスト)に基づく根の高温耐性の品種間差異は.昨年度に行ったTTC還元テストやイオン漏出テストの結果と一致しなかった.このことから,TTC還元テストやイオン漏出テストは,根の高温耐性の根の高温耐性の評価法として適切でないことが明らかになった.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 季 智軍: "キュウリの高温順化過程における葉の糖・ABA・タンパク含量とタンパク組成の変化" 園芸学会雑誌. 66・別1. 366-367 (1997)
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[Publications] 季 智軍: "キュウリの高温順化過程における葉と葉緑体膜の脂質含量およびその脂質酸組成の変化" 園芸学会雑誌. 66・別2. 408-409 (1997)
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[Publications] 賀 利雄: "イオン漏出テストとTTC還元テストに基くキュウリ根の高温耐性の品種間差異" 園芸学会雑誌. 66・別2. 410-411 (1997)