1996 Fiscal Year Annual Research Report
環境中の不安誘発物質の分布とヒトでの曝露レベル評価
Project/Area Number |
07457093
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
真鍋 重夫 東京大学, 医学部, 助教授 (90165928)
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Keywords | 不安誘発物質 / β-カルボリン / タバコ煙 / 大気粉じん / 室内空気汚染 |
Research Abstract |
FG7142(N-methy1-β-carboline-3-carboxamide)は実験的に合成されたβ-carboline誘導体で,ヒトに対して厳しい不安発作を生ずる物質であることが知られている。平成7年度において,FG7142がタバコ煙中に存在するばかりでなく,大気粉じん,ゴミ焼却場灰,植物(木材など)の燃焼煙中に存在することを明らかとした。また,FG7142の発生機序については植物中のトリプトファンあるいはβ-carbolineが燃焼中に生ずる揮発性アミン(メチルアミン)と反応して生ずる可能性が最も考えられることを明らかとした。また,室内空気がタバコ煙中のFG7142により汚染されていることも証明した。こうした昨年度の知見はFG7142が広く環境中に分布していることを示している。 今年度の研究においては環境中のFG7142がヒト精神機能に影響を及ぼしているかどうかを判断するために,ヒトにおけるFG7142の曝露レベルを推定することにした。既に確立している高速液体クロマトグラフによるFG7142の測定系を用いて,ヒト尿中FG7142レベルと1日排泄量を測定した。さらに,尿中排泄量からの真の曝露レベルを推定するために,動物実験を行い,摂取量(あるいは曝露量)のどの程度が24時間内に尿中に排泄されるかを検討した。この結果,ヒトにおけるFG7142の尿中排泄量は喫煙者では1日当たり平均2.1ngで,非喫煙者では平均0.5ngであった。また,動物実験においてはラットを用い,体重0.5mg/kgから5mg/kgのFG7142を腹腔内投与し,尿中への排泄量を検討した。この結果,投与量の約80%が24時間以内に尿中に排泄された。つまり,動物実験のデータをヒトに外挿できると仮定すれば,ヒトにおける真の曝露レベルは数ng以下と考えられる。一方,人体実験のデータでは血中のFG7142レベルが150ng/ml以上の場合にのみ不安発作が認められている。したがって、環境中に存在するFG7142はそれのみでは,ヒトに不安発作を生ずる可能性は低いと判断される。しかし,他の不安誘発物質との相互作用が判明していない現状では結論はできないと考えられる。
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[Publications] J.Yuan and s.Manabe: "The Mechanism of formation of FG7142,an anxiogenic agent through combustion of wood" Environmental Science. 4.4. 221-231 (1996)
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[Publications] J.Yuan and S.Manabe: "Evaluation of exposure level of FG7142,an anxiogeic agent in humans" Environmental Pollution. (印刷中). (1997)
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[Publications] S.Manabe et al.: "Age-related accumulation of i-methyl-1,2,3,4-tetrahydro-β-carboline-3-carboxylic acid in human lens" Exprimental Eye Research. 63. 179-186 (1996)
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[Publications] S.Manabe et al.: "Determination of isatin in urine and plasma by high-performance liquid chromatography" Journal of Chromatography. (印刷中). (1997)