1995 Fiscal Year Annual Research Report
更年期高血圧発症の遺伝的背景およびその発症機構に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
07457126
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
猿田 亨男 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (70051571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 隆幸 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40235255)
林田 朋子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20228604)
大野 洋一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10203895)
林 晃一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80164937)
林 松彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (60129608)
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Keywords | 更年期高血圧 / 食塩感受性 / 細胞内カルシウム代謝 / 卵巣摘出術 / 圧利尿反応 / 血小板 / エストロゲン / ダールラット |
Research Abstract |
ヒトにおいては遺伝・環境因子の統一が困難なため、予定通りまず実験動物としてダール食塩感受性高血圧ラットを用いた。これは同種内に食塩感受性と抵抗性の二系統が存在し、この素因が遺伝的背景により規定されている。すでにDahlは感受性ラットでは性腺摘出により高血圧が増悪することを報告している。 収縮期血圧は低食塩食群では変化しなかったが、高食塩食群の卵巣摘出群においては、高血圧と、心肥大を認めた。林はこのモデルにおいて圧-利尿曲線の解析を行い、食塩感受性ラットと抵抗性ラットの間には感受性に差異が存在するが、卵巣摘出により感受性ラットでは圧-利尿反応が悪化するが、抵抗性ラットでは不変であるという結果を得た。 さらに同一ラットの血小板細胞において、Fura-2を用い蛍光光度計により細胞内カルシウムを、基礎値、刺激時、細胞外カルシウムをfreeにしたときについて検討し、卵巣摘出群は、食塩負荷後、細胞内貯蔵カルシウムが低下することを確認している。 佐々木はこのラットにおいて、卵巣摘除の前後で、心臓の組織で、血圧の制御に関連する陽イオン制御因子の発現量が変化するかどうかをNothern Blotの手法を用いて検討し、心筋細胞の筋小胞体カルシウムポンプ(IIb)のmRNAの発現が、高食塩食の卵巣摘出群においては低下することを確認した。これは細胞内Ca貯蔵量の低下に合致するものと考えられた。 大野は高血圧自然発症ラットでの連鎖解析により、この2型筋小胞体カルシウムポンプ遺伝子座位がカルシウム動員の増加を介して高血圧の発症に寄与することを明らかにした。また培養細胞にエストロゲンを投与した際の細胞増殖、遊走の促進作用を確認した。 予定していた研究のうちエストロゲンの変化により起こる食塩感受性の変化に関してはほぼ実験を終え、前述のような知見を得た。まさに閉経後の食塩感受性の高血圧発症のモデルとして予想通りの結果であり、これは雑誌Hypertensionに掲載された(平成8年1月号)。機序解明の新たな端緒として確立されるものと考えられる。
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[Publications] 大塚恵一他: "Blunted Pressure Natriuresis in Ovariectomized Dahl-Iwai Salt-Sensitive Rats" Hypertension. 27. 119-124 (1996)
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[Publications] 大野洋一他: "Augmented Ca2+mobilization is a hypertensive trait" Clin. & Exper. Pharmacol. & Physiol.22(suppl.1). S220-S222 (1995)