1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト全身性エリテマトーデスの原因遺伝子の同定とその機能
Project/Area Number |
07457128
|
Research Institution | ST.MARIANNA UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
坂根 剛 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40127519)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 登 聖マリアンナ医科大学, 難病治療研究センター, 助教授 (40235982)
|
Keywords | 全身性エリテマトーデス / ループス腎炎 / A30遺伝子 / 陽性荷電 / レセプターエデイテイング / 遺伝子診断 / 多型性 |
Research Abstract |
ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)はBリンパ球の機能過剰と調節性Tリンパ球の機能異常により多彩な自己抗体産生をもたらし、免疫複合体を形成して全身に炎症性病変を惹起する代表的な自己免疫疾患である。研究代表者らはSLEの中でも生命予後の悪いループス腎炎の発症に陽性荷電の強い抗DNA抗体が関与することを明らかにし、その抗DNA抗体cDNA、SC17とSC17に対応する胚細胞型免疫グロブリン軽鎖遺伝子SG3を同定した。本研究では胚細胞型免疫グロブリン軽鎖遺伝子座のSG3遺伝子領域の多型性を検討し、この多型性が病原性自己抗体の出現を規定するのか否かを解析した。まずループス腎炎患者好中球ゲノムDNAを用いてコスミドライブラリーを作製した。クローニングの結果、SG3遺伝子は胚細胞型免疫グロブリンk鎖遺伝子座の下流に存在するA30遺伝子であることが明らかになった。さらにA30遺伝子が正常に存在するSLE患者では腎症を発症し、A30遺伝子が欠落する患者では腎炎を発症しないことが明らかになり、A30遺伝子のループス腎炎発症における重要性が明らかになった。さらに正常者ではレセプターエデイテイングと呼ばれる機序でA30遺伝子の発現が抑制されているが、SLE患者ではA30遺伝子のレセプターエデイテイング機構に異常があり自己抗体が産生されることが明らかになった。このレセプターエデイテイング機構は自己抗体産生抑制機構の一つで、自己抗体産生B細胞においてrearrangement activating gene (RAG)活性の再上昇により、自己抗体軽鎖遺伝子が自己反応性を持たない軽鎖遺伝子に置き換わる機序である。ここで得られた成績は、SLE患者のA30遺伝子を検討することで腎症発症を予測できる可能性を示唆し、将来的にはSLEの遺伝子診断の可能性を示唆している。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Suzuki,N.,et al.: "Characterization of a germline Vk gene encoding cationic anti-DNA antibody and role of receptor editing for development of the autoantibody in patients with systemic lupus erythematosus." The Journal of Clinical Investigation. 98・(8). 1843-1850 (1996)
-
[Publications] 坂根剛、他: "血液病と自己免疫:自己免疫の最近の考え方" 日常診療と血液. 5・(3). 303-313 (1995)
-
[Publications] 坂根剛、他: "膠原病の診かたと新しい治療:免疫から見た膠原病" 臨床と研究. 72・(4). 798-803 (1995)
-
[Publications] 鈴木登: "SLEB細胞における転写因子の異常" 医学のあゆみ. 177・(2). 130-131 (1996)
-
[Publications] 鈴木登,他: "抗体のアフェニティ測定" 臨床免疫. (印刷中). (1997)
-
[Publications] 坂根剛: "今日の臨床免疫学から見た自己免疫疾患:ヒトSLEの発症機序と病態解明の新たな展開、新医科学大系第8巻B免疫応答-生体の防御機序II(岸本忠三責任編集)" 中山書店、東京, 231-257 (1996)
-
[Publications] 坂根剛: "自己免疫疾患発症の免疫機構、免疫の基礎知識(螺良英郎、矢田純一監修)" 診療新社、東京, 81-95 (1996)