1996 Fiscal Year Annual Research Report
胃潰瘍および胃癌の病態生理における分子生物学的検討-増殖因子および細胞外マトリックスの役割-
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07457140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小林 絢三 大阪市立大学, 医学部, 教授 (70046928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 哲男 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60145779)
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Keywords | 胃潰瘍 / 増殖因子 / 細胞外マトリックス / 分子生物学 |
Research Abstract |
平成8年度の研究においては、まず、平成7年度の研究においてラット酢酸潰瘍の治癒過程で増加を認めたTGF-β1の中和抗体を投与した場合の潰瘍治癒への影響を検討した。その結果、TGF-β1中和抗体は潰瘍治癒に影響を与えなかったことから、内因性TGF-β1の潰瘍治癒における意義は少ないと考えられた。次に、正常成体では癌組織や創傷治癒などの特殊な組織・状態においてのみ出現する細胞外マトリックスであるテネーシン(TN)の検討も行った。ラット酢酸潰瘍の治癒過程においては、TNのmRNAは潰瘍作成の6時間後に既に発現し12時間目に最初のピークが見られ、一次減少した後再度上昇し5日目に再びピークを形成し、その後速やかに減少した。免疫組織染色において最初のピークである12時間目では、TNは潰瘍辺縁の被蓋上皮欠損部の残存腺管先端に陽性像を認めた。そのTN陽性間質がとりまく細胞はPCNA染色では陰性であった。また、5日目では潰瘍辺縁の再生腺管先進部に限局してTNの陽性像を認めた。しかし7日目にはTN陽性像は消失し、同部位は基礎膜成分であるフィブロネクチン、コラーゲンIVにより置き換わっていた。すなわち、TNは潰瘍治癒の極めて早期に出現するが、その主な働きは増殖ではなくむしろ遊走への関与が推測され、成熟基底膜が完成するまでの一時的基底膜としての役割も果たしていると考えられた。また、TNと同様に胎児組織において出現し、成体では癌組織中などに認められるフィブロネクチンEIIIA、EIIIBに関しても検討を行った。その結果、フィブロネクチンEIIIA、EIIIB共に潰瘍治癒過程早期に遺伝子レベルで増加することが明らかとなった。以上より、癌組織などで見られる特殊な細胞外マトリックスであるテネーシン、フィブロネクチンEIIIA、EIIIBは、胃潰瘍治癒過程早期に出現し、潰瘍治癒に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)