1997 Fiscal Year Annual Research Report
suicide遺伝子導入による肝癌に対する遺伝子治療の確立
Project/Area Number |
07457141
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
栗山 茂樹 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50244710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 謙太郎 奈良県立医科大学, 医学部, 医員
増井 一弘 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (10295800)
吉川 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (50230701)
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Keywords | 遺伝子治療 / 肝癌 / レトロウイルス / suicide遺伝子 / チミジンキナーゼ / シトシンデアミナーゼ |
Research Abstract |
我々はすでに、アルブミン遺伝子プロモーターを内因性制御因子とするレトロウイルスベクターを用いれば、in vitroおよびin vivoにおいて肝癌細胞特異的なレポーター遺伝子発現を誘導し得ることを報告しているが、本年度の研究において、さらに以下のごとき結果を得た。1)アルブミン遺伝子の制御下に単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)を組み込んだレトロウイルスを種々の培養細胞株に感染させると、肝癌細胞株のみが選択的にガンシクロビル(GCV)感受性となり傷害される。2〉上記レトロウイルス感染肝癌細胞を同系マウス皮下に接種し、腫瘍径が約20mmに達した時点より、GCVを腹腔内に投与すると、14匹中11匹のマウスにおいて腫瘍の完全消失を誘導し得たが、残る3匹においては腫瘍の消失は認めず、これらの腫瘍におけるGCV耐性の獲得は、HSV-tk遺伝子のmethylationによるものであった。3)大腸菌由来のシトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子と5-フルオロシトシン(5-FC)による遺伝子治療は、遺伝子が導入されていない細胞を傷害するbystander effectを誘導し得た。さらに、このbystander effectの誘導には細胞接触は必要ではなく、CD遺伝子導入細胞が5-FCより産生する5-フルオロウラシル(5-FU)によって誘導されることが示された。4)CD遺伝子導入肝癌細胞は、in vivoにおいては強力なbystander effectを誘導し、CD遺伝子導入細胞が腫瘍内に5%存在するのみで、5-FC投与により腫瘍は有意に縮小した。in vivoにおける強力なbystander effectはCD/5-FCシステムより産生される5-FUの直接作用よりも、本システムによって増強された宿主の腫瘍免疫が主要な役割を演じていた。
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[Publications] Tadanori Yoshimatsu: "Improvement of retroviral packaging cell lines by introducing the polyomavirus early region" Human Gene Therapy. 9. 161-172 (1998)
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[Publications] Shigeki Kuriyama: "Tissue-specific expression of HSV-tk gene can induce efficient antitumor effect and protective immunity to wild-type hepatocellular carcinoma" International Journal of Cancer. 71. 470-475 (1997)
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[Publications] 栗山茂樹: "TNF-αを用いたin vivo遺伝子治療" 血液・腫瘍科. 35・4. 322-330 (1997)
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[Publications] 栗山茂樹: "消化器癌遺伝子治療への試み TNFを用いた癌遺伝子治療" 肝胆膵. 34・4. 501-509 (1997)
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[Publications] 栗山茂樹: "TNF-α遺伝子を用いた肝癌に対する遺伝子治療の検討" Minophagen Medical Review. 42・3. 149-152 (1997)
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[Publications] 山崎正晴: "蛍光染色細胞を用いた肝細胞癌の浸潤および肝内転移様式の検討" 肝臓. 38・9. 576-577 (1997)