Research Abstract |
1,マウス同所性肝移植モデルの確立:世界では他に一施設の報告しかなかったマウス同所性肝移植モデルを確立した.1996年3月までに600例のマウス同所性肝移植を行い,その成功率は97%である.本モデルは肝移植の移植免疫反応の分子生物学的機序を解明するうえできわめて重要である。2,マウス肝移植における免疫寛容の誘導:異系間マウス肝移植では,MHCの組み合わせによらず,移植肝は必ず生着することが判明した.さらに,肝移植後donorの皮膚も生着することより,免疫寛容の成立も確認された.したがって,マウス肝移植においては免疫寛容を誘導する特異的なメカニズムが存在すると考えられた.3,マウス肝移植におけるキメリズムの意義の検討(1)共焦点レーザー顕微鏡による免疫組織学的検討:MHC抗原特異的なmonoclonal抗体による免疫組織染色でrecipientの脾臓,胸腺を解析したところ,移植後2週間目までdonortypeの細胞が存在し,キメリズムの成立を確認した.(2)Flowcytometryによる解析:donorおよびreciplentのMHC抗原に特異的なmonoclonal抗体による二重染色でrecipientの肝,脾,胸腺を解析したところ,脾臓,胸腺ではキメリズムは確認できず,キメリズムのレベルはFlowcytometryの感度以下であった.また,移植肝においてdonor typeとrecipient typeの両方が陽性となるdouble positive cellの存在が判明し,移植肝の免疫寛容誘導機序に密接な関係があると考えられた.(3)RT-PCRによる解析:donorおよびrecipientのMHCのclass Iおよびclass IIに特異的なprimerを設定し,recipientの肝,脾,腎,胸腺のRNAを抽出しRT-PCRを行った.その結果,RNAレベルでもキメリズムは移植後2週間目まで存在したが,以後消失していた.以上の結果より,キメリズムは免疫寛容の結果に過ぎず,肝移植においては免疫寛容誘導の未知のメカニズムが存在しており,マウス肝移植モデルにより,その分子生物学的機序の解明と人為的免疫寛容誘導法の確立が可能と考えている.
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