1996 Fiscal Year Annual Research Report
ラット及びマウス肝移植におけるキメリズムと免疫寛容に関する実験的研究
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07457263
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
杉岡 篤 藤田保健衛生大学, 医学部・外科学(II), 助手 (20171150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 収 ひまわり検診センター, 所長
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Keywords | 免疫寛容 / 肝移植 / マウス / MHC / キメリズム / RT-PCR / Flowcytometry / 可溶性MHC class I抗原 |
Research Abstract |
臓器移植の究極の目的は,ドナー特異的な免疫抑制状態(免疫寛容)誘導法を確立することである.肝移植には免疫寛容誘導能があることが知られていたが,その分子生物学的メカニズムを明らかにするためには,マウスを用いた同所性肝移植モデルが不可欠である.マウス肝移植モデルはこれまで世界で一施設から報告されているのみであったが,われわれは本助成費を受けて,1997年2月までに910例のマウス同所性肝移植を行い,最近1年間で手技的成功率97%を達成し,本邦で初めて,世界では2番目に本モデルを確立した. その結果,11種類の異系マウスを用いて,38種類の異系間移植を行ったが,いずれにおいても拒絶反応による死亡例はなく,ドナーの皮膚移植により免疫寛容が誘導されることも確認した.同様の結果が,実験用マウスとは遺伝的背景の全く異なる野生株マウスにおいても成立することから,マウス同所性肝移植は免疫寛容誘導メカニズムを解明するうえで最適な実験モデルであることが明らかとなった. 本モデルを用いて,Starzlらが移植臓器生着および免疫寛容成立のメカニズムとして提唱したマイクロキメリズムをRT-PCR法と共焦点レーザー顕微鏡により検討した.その結果,マイクロキメリズムは移植後2〜3週間は成立していたが,その後消失することが確認され,マイクロキメリズムは免疫寛容の原因ではなく,結果であることが明らかとなった. Flowcytometryでは,移植肝内にドナータイプとレシピエントタイプのMHCclassI抗原が共に陽性となるdouble-positive cellの存在を明らかにするとともに,RT-PCR法では移植後の可溶性MHC classI抗原のmRNAレベルでの転写を明らかにした.表面抗原の解析からdouble-positive cellはレシピエント由来のclassII陽性細胞が,移植肝内で産生されたドナータイプの可溶性抗原をトラップしたものと考えられ,その細胞種としてpremature dendritic cellの可能性が示唆された。以上より,可溶性MHC classI抗原と移植肝内の特異的細胞種のinteractionが免疫寛容誘導の新しいメカニズムと考えられた.
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[Publications] 杉岡篤: "マウス同所性肝移植の手技" Organ Biology. 3・1. 41-47 (1996)
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[Publications] A.Sugioka: "Evaluation of microchimerism after orthotopic liver transplantion between allogeneic mice" Transplantaion Proceedings. 29. 1189-1192 (1997)