1996 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内情報伝達系と細胞骨格蛋白からみた脳虚血の病態と治療に関する研究
Project/Area Number |
07457357
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坂部 武史 山口大学, 医学部, 教授 (40035225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 敏三 山口大学, 医学部, 助手 (90034991)
松本 美志也 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (60243664)
佐野 隆信 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (40243670)
中木村 和彦 山口大学, 医学部, 助教授 (50180261)
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Keywords | 脳虚血 / 虚血性神経細胞死 / calpain / calpastatin / 細胞骨格タンパク質 / fodrin / calpain inhibitor-1 / 脳低温 |
Research Abstract |
本年度は、主に前脳虚血モデル(一部断頭モデル)を用い、虚血時および再潅流時の病態を検討した。また、zymographyにより、calpainとfodrinの変化の局在性を海馬、大脳皮質、小脳で測定した。さらに、脳保護という観点から、軽度低温(33℃)、およびcalpain阻害薬であるcalpain inhibitor-1(CAI)の影響を検討した。 断頭前および後(40分間)に軽度低温を維持すると、α-fodrin分解は有意に抑制され、低温によるcalpainの酵素活性の抑制が脳保護効果を示す可能性が示唆された。 前脳虚血モデル(両側総頚動脈遮断と低血圧(50mmHg))では、30分虚血時および再潅流60分後にα-fodrinの分解が約1.5倍、2倍に増加した。また、calpastatin活性は有意な変化を示さなかったが、細胞質中のcalpainは再潅流で有意に減少し、calpainが活性化(膜へ移行)された結果と考えられた。 虚血10分前にCAIを静注すると、再潅流60分でα-fodrinの分解が有意に抑制され、細胞質中のcalpainの減少(活性化)も抑制される傾向がみられた。 Zymographyで局在変化をみると、特に海馬で、虚血時と再潅流時にfodrinの分解と、細胞質中のcalpainの減少(活性化)が著明であった。 以上より、 (1) 虚血で細胞質中のcalpainが減少(活性亢進)し、fodrinの分解が亢進すること (2) この変化は海馬で顕著であること (3) 低体温でこれらの変化が抑制され、脳保護作用の一機序としてcalpain活性抑制作用があげられること (4) CAIの全身投与が細胞傷害を軽減しうること が、明らかとなり、虚血性脳障害の治療の展開に示唆を与える結果が得られた。
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