1997 Fiscal Year Annual Research Report
女性生殖器細胞の増殖、分化とアポトーシスの局所調節機構に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
07457388
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丸尾 猛 神戸大学, 医学部, 教授 (60135811)
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Keywords | 卵巣 / アポトーシス / 卵胞閉鎖 / TNFα / TGFβ / FSH / IGF-I |
Research Abstract |
ブタ顆粒膜細胞培養系をモデルとしてTNFαとTGFβの顆粒膜細胞増殖能と内分泌機能ならびにアポトーシス発現に及ぼす影響を検討した。FSHとIGF-I添加で促進した増殖能とE_2分泌能はTNFαあるいはTGFβの同時添加で減少し、増殖能抑制は小卵胞で著明で、24時間のlag timeを要したのに対し、E_2分泌抑制は大卵胞と中卵胞で著明で、48時間のlag timeを要した。アポトーシスに特有なDNA断片化シグナルの発現はFSHとIGF-I添加で減少したが、TNFαあるいはTGFβの同時添加で著明に増加した。以上より、TNFαとTGFβは顆粒膜細胞増殖能と内分泌機能を抑制するが、その作用は卵胞発育に伴い増殖能抑制から分化機能抑制へと変化し、アポトーシス誘導因子として働くことが明らかとなった。 ヒト卵巣組織断片でのTNFα局在態度はDNA断片化signalの発現態度とよく一致し、未熟な卵細胞、黄体細胞、閉鎖卵胞の顆粒膜・莢膜細胞で強陽性であった。しかし、TGFβのヒト卵巣内局在態度はDNA断片化signalの発現パターンと異ったことより、TNFαが卵胞のapoptosisにより密に関与していると推察された。 PCOS卵巣では、正常卵巣に比較して、顆粒膜細胞でのIGFBP-4蛋白の発現が強く、この顆粒膜細胞で増加したIGFBP-4がIGF-I作用のinhibitorとして働き、FSH作用の発現が障害されることが明らかとなった。他方、顆粒膜細胞でのIGFBP-4発現に対してIGF-Iは抑制的に働くのに対し、GnRH,TGFβ,TNFαは促進的に働くことを認めた。このことより、PCOS卵巣へのIGF-Iの卵胞内局所投与あるいはTGFβ拮抗剤、TNFα拮抗剤の卵胞内局所投与がIGFBP-4蛋白の発現を抑えるうえで有効なアプローチとなる可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Takeshi Maruo: "Increased expression of Bcl-2 protein in human uterine leiomyoma and its up-regutator by progesterone" J Clin Endocrinol Metab. 82. 293-299 (1997)
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[Publications] 丸尾 猛: "サイトカイン特にTumor necrosis factor αとTransforming growth factor βによる卵巣顆粒膜細胞の増殖能、内分泌機能とアポトーシス発現の調節" 産婦人科の進歩. 49. 507-515 (1997)
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[Publications] 丸尾 猛: "卵巣機能とアポトーシス" ホルモンと臨床. 45. 1-13 (1997)
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[Publications] 丸尾 猛: "子宮筋腫細胞におけるEGF,EGF受容体発現に及ぼす性ステロイドの影響" 産婦人科の進歩. 49. 271-273 (1997)
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[Publications] 丸尾 猛: "卵胞発育と成長因子" 組織培養工学. 23. 251-255 (1997)
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[Publications] 丸尾 猛: "絨毛細胞の増殖、分化とアポトーシス" 産婦人科の世界. 49. 589-595 (1997)
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[Publications] Takeshi Maruo: "Placental Molecules in haemodynamics, Transport and Celluler Regulation" Miller PK, Hata T, Takayama (eds) University of Rochester Press, 409 (1997)
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[Publications] Takeshi Maruo: "Biology of Pregnancy" Nakayama T. Mariho H (eds) Keiseisha, 140 (1997)